鉄鋼とアルミニウムに対する輸入関税を免除する見返りとして同盟国に軍事費の引き上げを求める米トランプ大統領の要求を、ドイツ政府は拒否する考えだ。安全保障を根拠とする関税引き上げを容認すれば、保護主義の動きが止めどなく加速していく懸念があるためで、独ゲオルク・シュトライター副報道官は9日、通商問題と防衛問題の間には関連がないとの声明を出した。
トランプ大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課すことを命じる文書に署名した。米国の安全保障を根拠としている。税率はそれぞれ25%、10%で、23日から適用される。
同大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟国などの同盟国については、軍事費を引き上げれば同関税を免除する考えを示唆している。ドイツは軍事費の対国内総生産(GDP)比率が1.2%にとどまり、24年までに同2%へと引き上げるとしたNATO目標の達成が難しい状況にあるうえ、巨額の経常黒字も計上していることから、米国の圧力は特に強い。
トランプ政権対しては欧州連合(EU)が加盟国を代表する形で対応することになっており、欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は10日、EU 本部でライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と会談。鉄鋼とアルミニウムに高関税を課す措置は世界貿易機関(WTO)のルールに抵触すると訴え、同盟国のEUを対象から除外するよう求めたものの、成果は得られなかった。
EUは話し合いを続ける一方で、関税が導入された場合はただちにWTOに提訴するほか、米国から輸出される28億ユーロ相当の製品に25%の報復関税を課す方針を固めている。トランプ大統領はこれを念頭に、米国製品に報復関税を課すのであれば、対抗措置を取る意向を表明。「メルセデスベンツに関税を課す、BMWに関税を課す」と強硬な姿勢を示した。