雇用主は被用者を平等に取り扱わなければならない。これは正当な権利を行使した被用者の差別待遇を禁じた民法典(BGB)612a条や、人種・出自・民族や組合活動を理由とする被用者の差別を禁じた事業所体制法(BetrVG)75条などに記されたルールである。では、ストライキへの参加を見合わせた被用者にのみ特別手当を支給する雇用者側の措置は不当な差別に当たるのだろうか。この問題を巡る係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が14日の判決(訴訟番号:1 AZR 287/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は小売店の店員が同社を相手取って起こしたもの。同社に対してはサービス労組Verdiが2015年から16年にかけて、計数日ストを実施した。同社はこれを受けて各ストの直前に、ストに参加しない被用者に特別手当を支給することを約束。手当は当初、1日につき200ユーロで、その後も同100ユーロに上った(ともにフルタイム勤務の支給額。パート社員には勤務時間に応じた割合で同手当を支給)。
支給額ベースの月給が1,480ユーロだった原告店員はストに参加。ストの終了後、スト参加者に同手当を支給しないのは不当な差別に当たるとして、総額1,200ユーロの支給を求めて提訴した。
原告は一審と二審でともに敗訴し、最終審のBAGでも訴えを退けられた。判決理由でBAGの裁判官は、スト参加を見合わせた被用者にのみ特別手当を支給するのは平等な取り扱いとは言えないものの、被告企業は同措置により、業務の支障を緩和しストの圧力に抗しようとしたことを指摘。同措置はストに対抗する手段として雇用者に認められた「闘争手段選択の自由(Kampfmittelfreiheit)」の枠内に収まっており、「相当性の原則(目的を達成するためにはそれに見合った妥当な手段を用いなければならないという原則=Grundsatz der Verhaeltnismaessigkeit)に合致しているとの判断を示した。被用者の賃金を基準に考えるとスト不参加手当の額が相対的に高いことについても問題がないと言い渡した。