「旧型車の走行禁止ゾーン設定を」、フランクフルトに裁判所が命令

ヘッセン州政府が作成したフランクフルト市の大気浄化計画は効果が不十分だとして環境保護団体DUHが提訴していた裁判で、ヴィースバーデン行政裁判所は5日、訴えを認める判決を下し、旧型ディーゼル車などの走行禁止ゾーンを設定するよう命じた。ドイツの裁判所からディーゼル車の走行禁止を言い渡されたのはアーヘン、シュツットガルトに次いで3カ所目。ヘッセン州政府は判決後の声明で、ディーゼル車に排ガス浄化装置を後付けすれば窒素酸化物(NOx)の排出量を大幅に削減でき、走行禁止措置を取る必要がなくなるとして、後付けを可能にする法的な枠組みを早急に策定するよう連邦政府に強く促した。

欧州連合(EU)加盟国はNOxの濃度を1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)以下に抑制することを2010年以降、義務づけられている。ドイツではベルリン、ミュンヘンなどの都市・地域で同規制を順守できない状況が続いており、昨年は計67カ所で違反が確認された。

最高裁の連邦行政裁判所は2月、西南ドイツのシュツットガルト市と西部のデュッセルドルフ市の大気浄化計画をめぐる係争で、他に手段がない場合はディーゼル車の走行禁止を認める判決を下した。5月に公開された判決文には、個々の道路を対象に欧州排ガス基準「ユーロ5」以下のディーゼル車の走行を即時禁止できることが明記。一定地域全体(ゾーン)の走行禁止についても車両の環境性能によって時期をずらしながら段階的に導入することが認められている。ユーロ5対応ディーゼル車のゾーン内走行禁止措置は早ければ来年9月から実施できる。

ユーロ5対応ディーゼル車のゾーン内走行禁止の開始可能時期をユーロ4以下のディーゼル車よりも後に設定したのは、わずか3年前の2015年8月末まで新車販売が認められていたことを踏まえ、購入者の立場を考慮したためだ。

ヴィースバーデン行政裁は最高裁のこの判決を踏まえ、フランクフルトに走行制限ゾーンを設定し、旧型ディーゼル車と旧型ガソリン車の走行を禁止するよう命じた。具体的には、ユーロ4以下のディーゼル車と同ユーロ2以下のガソリン車については来年2月1日以降、ユーロ5対応ディーゼル車についても同9月以降、制限ゾーン内の走行を禁止するよう言い渡した。

同行政裁は走行制限ゾーンの範囲を具体的に指示していないものの、裁判長は判決理由の言い渡しのなかで、EUの粒子状物質(PM)規制を遵守するためにすでに設定されている同市の「環境ゾーン」を踏まえて決めるよう明言した。同環境ゾーンはアウトバーンA3号線、A5号線、A661号線に囲まれる広い地域であるため、市民や企業は大きな影響を受けることになる。フランクフルトと近郊地域のユーロ5対応ディーゼル車は18万台、ユーロ4対応ディーゼル車は9万8,000台に上る。

市は連邦政府を批判

同行政裁は手工業者や特定の住民グループについては禁止措置の適用を見合わせることを認めた。ただ、ゾーン内を走行できる時間帯の制限や、走行許可料金を高く設定することで、新型車両への買い替えや排ガス浄化装置の後付けを促すことを求めている。

排ガス浄化装置である尿素SCRシステムをディーゼル車に新たに取り付けると、NOxの排出量を最大で約90%削減できる。だが、連邦政府は浄化装置の後付けを製造元に義務づけることに対し否定的だ。アンドレアス・ショイアー連邦交通相は法的、技術的に問題があるためだと強調している。

後付けコストが最低でも1,500ユーロと高く、メーカーの財務を圧迫するという事情もある。メーカーの投資資金が目減りする結果、電気自動車や自動運転車の開発が遅れ独自動車業界の競争力が低下することを交通相は懸念している。

これに絡んでフランクフルトのクラウス・エスターリング交通局長は「自動車業界と連邦政府の不手際のつけを市民と都市が支払わされる」と批判した。

ヘッセン州政府は控訴を申請できるため、今回の判決は確定していない。ただ、控訴申請が承認されず、ヴィースバーデン行政裁の判決が確定する可能性もある。同政府に残された時間は少なく、難しい対応を迫られている。