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2018/10/17

総合 - ドイツ経済ニュース

州議選で国政与党大敗、メルケル政権への不満鮮明に

この記事の要約

ドイツ南部のバイエルン州で14日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、国政レベルの与党である中道右派のキリスト教社会同盟(CSU)と同中道左派の社会民主党(SPD)はともに得票率を10%以上、落とし大敗した。メルケル政権 […]

ドイツ南部のバイエルン州で14日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、国政レベルの与党である中道右派のキリスト教社会同盟(CSU)と同中道左派の社会民主党(SPD)はともに得票率を10%以上、落とし大敗した。メルケル政権に対する有権者の厳しい評価が反映された格好。28日にはヘッセン州でも州議会が行われることになっており、メルケル首相が党首を務めるキリスト教民主同盟(CDU)が同州議選で議席を大幅に喪失すると、党首交代を求める声が党内で強まりそうだ。

バイエルン州議選ではCSUの得票率が前回(2013年)を10.4ポイント下回る37.2%となり、1950年以来の低水準へと落ち込んだ。SPDは10.9ポイント減の9.7%へと半分以下に低下。ダントツの戦後最低を記録した。

メルケル政権では今夏、すでに欧州連合(EU)の他の加盟国で難民申請ないし難民登録手続き(二重三重の不正な難民申請を回避するためのEU生体認証データベース「ユーロダック」への指紋登録)を行った者をドイツに入国させないという政策方針をCSUの党首であるゼーホーファー内相が打ち出した。これは難民の取り扱いルールを定めたEUのダブリン協定に違反する政策であることから、国際協調を重視するメルケル首相は拒否。3月に成立した第4次メルケル政権は瓦解の危機へと陥った。ゼーホーファー内相の同政策は難民問題対策として効果が薄く、バイエルン州議選をにらんだ人気取りという色合いが濃かった。

国政与党3党は9月にも、問題発言を行った憲法擁護庁(BfV)長官の更迭をめぐって玉虫色の人事を取り決め、有権者や党内から強い批判を受けた。

CSUは難民問題を追い風に勢力を強める右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が自党の支持基盤を掘り崩すことに強い危機感を持っていることから、リベラルな難民政策を基本的に維持するメルケル首相を攻撃した。だが、CSUのこの姿勢は裏目に出た格好で、世論調査機関ヴァーレンがバイエルン州の有権者を対象に実施したアンケート調査では、州民にとって何が重要な問題であるのかをCSUは理解できなくなっているとの回答が65%に達した。特にゼーホーファー党首が厳しい評価を受けている。住宅、ディーゼル車走行禁止、教育などドイツが抱える問題は多岐にわたるにもかかわらず、難民問題で与党内の対立をいたずらに引き起こし、政治の機能を著しく損ねたことに多くの有権者は不満を持っている。

SPDは伝統的な支持層である労働者の減少や、国政レベルの政権を握っていた2000年代前半に同党が実施した構造改革を背景に支持率が長期、低迷している。迷走するメルケル政権の一角を担うことで有権者離れは加速しており、アンドレア・ナーレス党首はバイエルン州議選敗北の一因が国政での不手際にあることを認めた。

有権者の大半はAfDに否定的

両党の大敗を受けて、他の政党は得票率を伸ばした。中道左派の緑の党は8.9ポイント増の17.5%となり、CSUに次ぐ2位へと浮上した。SPDに不満を持つ中道左派の有権者の票が流れ込んだことなどが大きい。緑の党、SPD、左翼党(得票率3.2%)の合計得票率は30.4%で、前回(31.3%)とほぼ同じ水準を保った。

同州議選に今回、初参加したAfDは10.2%を獲得し、4位につけた。ヴァーレンの調べによると、年齢層では30~59歳(得票率12%)、職業では労働者(同17%)、学歴では日本の中卒に近い基幹学校卒(13%)と実科学校卒(12%)で得票率が高い。

AfDは国内16州のうちヘッセンを除く15州で州議会への進出を果たした。ヘッセン州議選でも議席獲得が確実とみられることから、9月下旬にはすべての州議会に議員を送り込む見通しだ。連邦議会(下院)と欧州議会ではすでに議席を獲得。連邦議会では野党第一党となっている。

AfDの躍進が続くため、社会全体が右傾化していると受け止められやすいが、同党に対して否定的な評価を下す有権者は支持者を大幅に上回っている。ヴァーレンのアンケート調査では「AfDには極右思想が広範に浸透している」との回答が78%に達した。各政党に対する有権者の評価(マイナス5~プラス5)をみても、AfDはマイナス3.2とダントツで低い。

各党の獲得議席数はCSUが85、緑の党が38、保守系地方政党「バイエルンの自由な有権者(FW)」が27、AfDが22、SPDが22、中道右派の自由民主党(FDP)が11で、総議席数は205。これまで単独与党の地位にあったCSUは過半数の103を大幅に下回っていることから、安定政権を樹立するために連立を模索しなければならない。連立先候補としては緑の党、FW、SPDの3党が考えられる。CDUが3党連立を目指す場合はFDPも候補となる。