未消化の有給休暇の相続、欧州司法裁が判断提示

被用者が死亡したために消化できなかった年次有給休暇は金銭に換算されたうえで遺産として相続される。これは欧州連合(EU)司法裁判所(ECJ)が2014年の判決(訴訟番号:C-118/13)で示した判断である。ドイツの最高裁である連邦労働裁判所(BAG)はこの問題に絡む2件の係争でECJの判断を仰ぎ、ECJが6日に判決(訴訟番号:C-569/16、C-570/16)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はヴッパータール市に勤務していたバウアー氏と個人事業主の下で働いていたブローソン氏の未亡人がそれぞれ起こしたもの。バウアー氏とブローソン氏は年次有給休暇を完全消化せずに死亡したことから、両未亡人はこれを金銭に換算して支給するよう夫の元雇用主に要求したが、拒否されたため提訴した。

BAGは、被用者が死亡しても年次有給休暇の権利は失効しないとした14年のECJ判決を踏まえたうえで、さらに2つの問題についてECJの判断を仰いだ。

1つは、ドイツの法律では有給休暇を相続財産とすることができないという問題、もう1つは、被用者が死亡すると被用者を疲れから回復させるという有給休暇の目的を達成できなくなる問題だ。BAGは、こうした問題があるにもかかわらず遺族は有給休暇の権利を相続できるのかをECJに質問した。

ECJはまず第一の問題について、有給休暇の請求権は被用者が死亡しても失効しないとしたEU法の規定を改めて指摘したうえで、国内法が有給休暇の権利相続を認めていない場合、遺族はEU法を根拠に同休暇の金銭換算支給を要求できるとの判断を示した。

二つ目の問題については、有給休暇の権利には休暇を取得するという時間的な側面と、休暇中も給与の支給を受けるという金銭的な側面があり、この両側面はEU社会法とEU基本権憲章でともに保障された基本権に当たると指摘。被用者の死亡により時間的な権利はなくなるが、金銭的な権利は失効せず相続対象になるとの判断を示した。

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