高額報酬を受ける銀行員の解雇規制を大幅に緩和する法案の準備をドイツ政府が進めている。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に伴い多くの銀行員がロンドンから独フランクフルトに転勤してくることに対応する狙い。財務省が関係省庁に送付した法原案をもとに『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。
英国がEUから離脱すると、金融機関はEU関連の業務を英拠点で行えなくなる。このため国際的な金融機関はそうした業務をロンドンからEU残留国へと移管する準備を進めている。
金融都市フランクフルトでは外国系の24銀行が進出ないし現地事業の拡大を決めており、2024年までに新規雇用1万人が創出されると予想されている。
同市の地元ヘッセン州は銀行誘致競争で有利になるために高額報酬行員の解雇基準を緩和する必要があるとして政府に法改正を要求。与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)はこの要求を政権協定に盛り込んでいた。
今回の法原案には、基本給が公的年金保険料の算定限度額を3倍以上、上回る行員であれば、銀行は理由の提示なしに解雇できるとの条項が盛り込まれている。今年の同限度額を元に計算すると、解雇規制の適用外となる基本給は西部地区で年23万4,000ユーロ以上、東部地区で20万8,000ユーロ以上となる。財務省はおよそ5,000人の銀行員が該当するとみている。
同限度額を超える基本給を得る銀行員であっても、勤務先が◇総資産が150億ユーロ以下◇欧州中央銀行(ECB)の監督下に入っていない――のどちらかに当てはまる場合は同条項が適用されない。