エネルギー大手の独ユニパー(デュッセルドルフ)は17日、商船三井と共同でドイツ北部のヴィルヘルムスハーフェン港に液化天然ガス(LNG)ターミナルを設置することで合意したと発表した。LNGターミナルがドイツに建設されるのは初めて。独・欧州の天然ガス調達先が多様化し、エネルギー供給の安定につながると期待されている。
浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)を設置し、2022年下半期から操業を開始する。取り扱い能力はドイツの年間需要の約1割に当たる年100億立方メートルで、貯蔵能力は26万3,000立方メートル。商船三井は設置費用を引き受けて同FSRUを取得するとともに、運営を行う。ユニパーはプロジェクト開発事業者として当局からの認可取得活動を行う。
FSRUは陸上設置型のLNGターミナルに比べて建設のコストが低く、期間も短いことから、事業リスクを低く抑えることができる。ヴィルヘルムスハーフェンに白羽の矢を立てたのは◇必要なインフラがすでに整っている◇既存のガスパイプライン・貯蔵インフラが近くにある◇水深が深いため、大型のLNGタンカーでも問題なく入港できる――というメリットがあるためだ。
ドイツは主にロシアと北海産の天然ガスをパイプラインで輸入している。このうちロシア産は地政学的なリスクが大きく、政府は依存を引き下げたい考え。北海産も将来的に産出量の減少が見込まれることから、今後は欧州域外からのLNG輸入が伸びるとの見方がある。
ユニパーのキース・マーチン最高営業責任者(CCO)は9月のメディアインタビューで、天然ガスは炭素時代から再生可能エネルギー時代への橋渡しとして大きな役割を果たすと述べ、ドイツにLNGターミナルを設置することの意義を強調した。競合RWEも独北部のブルンスビュッテル(エルベ川河口)にLNGターミナルを建設する計画だ。
ユニパー(当時エーオン)は15年、LNG化した米国産天然ガスの海上輸送を商船三井に委託する契約を締結した経緯がある。