雇用主と被用者が結ぶ有期雇用契約は契約回数が複数にわたる場合でも合計の期間が最大2年に制限されている。これは「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」14条2項第1文に明記されたルールで、雇用期間が計2年を超える場合は正当な理由がない限り正社員にしなければならない。
また、同じ雇用主に以前、雇用されていた被用者については、以前の雇用期間を新たな労働契約に反映させ、有期雇用期間の合計を2年以内に抑えなければならない(同項第2文)。これは2年間の雇用後に休止期間を置いて再び有期契約を結ぶという形で有期雇用が事実上、無制限に続くのを防ぐためである。
この第2文について最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は2011年の判決(訴訟番号:7 AZR 716/09)で、同じ雇用主の下における以前の雇用と新たな雇用の間隔が3年を超える場合は、雇用休止期間を悪用した有期雇用の無限継続に当たらないと指摘。インターバルが3年を超えるケースでは、以前の雇用期間は新たな労働契約に反映されないとの判断を示した。民法では通常、3年で時効が成立することを根拠とした。
この解釈をBAGが今年1月の判決(7 AZR 733/16)で改めたので、ここで取り上げてみる。
裁判は自動車メーカーの工場で勤務していた工員が同社を相手取って起こしたもの。同工員は2004年3月19日~05年9月末までの約1年半、被告企業で工員として勤務していた。その後13年8月19日から有期契約社員として被告メーカーでの勤務を再開。契約は数度更新され、15年8月18日まで勤務したものの、その後は更新されなかった。つまり新たな雇用の期間がちょうど2年になった時点で雇用関係が打ち切られたわけである。
原告はこれを不当として、雇用期限のない正社員としての採用を求めて提訴した。これに対し被告メーカーは、原告を以前雇用していた時期(04年3月19日~05年9月末)と再雇用を開始した時点(13年8月19日)とのインターバルが約8年に及ぶことを指摘。インターバルが3年を超えるケースでは以前の雇用期間は新たな労働契約に反映されないとした11年のBAG判決を根拠に、原告を正社員として採用する義務はないと反論した。
一方、独連邦憲法裁判所(BVerfG)は両者が係争中の18年6月に下した判決(訴訟番号:1 BvL 7/14、1 BvL 7/14、1 BvR 1375/14)で、11年のBAG判決は法律の拡大解釈に当たるとして、11年判決を破棄。BAGは憲法裁判決に合致した新たな法解釈を提示しなければならなくなった。
BAGは憲法裁の判断を踏まえた今回の判決で、◇以前の雇用期間と新たな雇用期間のインターバルが極めて長い◇以前の雇用期間と新たな雇用期間とで業務の種類が大きく異なる◇以前の雇用期間が極めて短かった――ケースでは、以前の雇用期間と新たな雇用期間の合計が2年を超えることが認められるとの判断を提示。原告のケースではインターバルが約8年にとどまり、以前の雇用期間も1年半と長いことから、両雇用期間の合計が2年を超えることは認められないとして、原告を正社員として採用することを被告メーカーに命じた。