「合意なき離脱」で世界の雇用60万人強に影響、独は最大の10万人強

英国が新たな協定を結ばずに欧州連合(EU)から離脱する「合意なき離脱(ハードブレグジット)」が起きた場合、ドイツの労働市場は世界で最も大きな影響を受ける――。ハレ・ライプニッツ経済研究所(IWH)がそんな調査結果を11日に発表した。

IWHは、「合意なき離脱」が起きると英国では輸入関税の適用でEU製品・サービスの価格が上昇しその需要が25%減少するが、その穴を埋める形でEU域外の製品・サービスに対する需要が増えることもないとの前提に立って、「離脱」が雇用に与える影響を分析した。

それによると、「離脱」は英国に商品を直接、供給するEU残留27カ国の企業で計18万人弱の雇用に影響をもたらす。また、市場はグローバルにネットワーク化されていることから、EU域外の雇用も大きな影響を受ける見通しで、世界全体では同60万人を超える見通しだ。調査を担当したオリバー・ホルテメラー副所長は「ハードブレグジットはグローバルなバリューチェーンを混乱させる」と述べた。特にサービス、農業、金属、IT産業で痛手が大きい。

雇用への影響が最も大きい国はドイツで、10万人以上が該当する。これに中国が6万人弱で続く。3位はフランスで約5万人、4位はポーランドとイタリアでともに約4万6,000人。

ドイツでは自動車産業(製造・販売)へのしわ寄せが大きく、同業界だけで1万5,000人に上る見通しだ。特にフォルクスワーゲン(VW)の城下町ヴォルフスブルクと、BMWを中心に自動車産業が集積するディンゴルフィング・ランダウ郡は痛手が大きい。

IWHは、「離脱」が雇用にもたらす影響は解雇だけでなく、操業短縮など別の形もあるとしたうえで、影響を受ける雇用の規模を算出した。先進国では人材不足が深刻なケースが目立つことから、多くの企業は解雇をできる限り避けるとみている。

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