死亡した被用者と配偶者の年齢差が一定水準以上の場合は遺族企業年金を支給しない、あるいは減額することは不当な年齢差別に当たらない。これは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年下した2つの判決(訴訟番号:3 AZR 43/17、3 AZR 400/17)で示した判断である(本誌2018年2月28日号、12月19日号を参照)。では、結婚期間が一定期間未満の寡婦(寡夫)に同年金を支給しない労使の取り決めも不当な差別に当たらないのだろうか。この問題を巡る係争で、BAGが2月19日に判決(訴訟番号:3 AZR 150/18)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は2015年4月に死亡した夫と11年に結婚した妻が夫の勤務先を相手取って起こしたもの。同勤務先では被用者が死亡した場合、妻(ないし夫)に遺族企業年金を支給することになっていた。だが、結婚10年以上であることが支給の条件となっていたことから、勤務先は原告への支給を拒否。原告はこれを不当として提訴した。
一審と二審は原告の訴えをともに退けたものの、最終審のBAGは逆転勝訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、遺族企業年金の支給条件として結婚期間が10年以上であることを条件とするルールは労使関係および、遺族が生活を維持できるようにするという同年金の目的と内的な関連がなく、恣意的のものであり、同年金の契約を結んだ被用者(ここでは原告の夫)を直接、不利に取り扱うものだと指摘。普通契約約款(Allgemeine Geschaeftsbedingungen=AGB)の作成使用者(被告企業)が信義義務に反して契約相手(原告の夫)に不利な取り決めを行った場合、その取り決めは無効となるとした民法典(BGB)307条1項の規定に基づいて、同年金ルールの無効を言い渡した。