自動車、機械、電機などドイツの主要産業の労働組合である金属労組IGメタルは今年の春闘で賃上げよりも雇用の維持を優先する意向だ。イェルク・ホフマン委員長は24日、製造業が大きな転換期を迎えていることや世界経済の低迷を背景に人員削減の動きが出ていることを念頭に、産業立地競争力を維持することの重要性を指摘。雇用者側が同労組の要求に応じれば、ベア要求の具体的な数値を定めずに交渉に臨む考えを示した。
製造業ではデジタル化や温暖化対策、自動車の電動化への対応が大きな課題となっている。コストがかさむうえ、雇用が大幅に減る恐れもあるためだ。同労組はこの問題に関して雇用者側と危機意識を共有しており、共同の課題と位置付けて解決していく意向だ。
ホフマン委員長はベアの数値を定めずに交渉を開始する条件として◇労組の同意なしに人員削減を行わない◇経営上の理由による整理解雇を排除する◇将来性の高い製品の生産を国外に移管しない◇拠点閉鎖を行わない――を提示した。雇用者側がこれを受け入れれば、大幅な賃上げを要求しない意向で、ベアはインフレ率を上回る程度の水準で満足するとしている。インフレ率は現在、低迷していることから、2年前の前回(ベア4.3%)のような大幅賃上げは回避される見通しだ。
金属雇用者団体ゲザムトメタルはIGメタルの方針について、「深刻な状況を理解している」として歓迎の意を示した。
現行の労使協定は3月末に失効する。ホフマン委員長は雇用者側と4月末までに合意することが目標だと述べた。4月28日まではストを実施できない決まりであることから、スト回避の考えを暗に示した格好だ。