中国湖北省武漢を中心に流行する新型コロナウイルスによる肺炎が27日夜、ドイツでも確認された。新型肺炎が独で確認されたのは初めて。中国からの出張者と接触したことが原因とみられる。ドイツでの感染者は28日に3人増え、4人となった。
同国で感染が初めて確認されたのは自動車部品大手ベバストのドイツ人社員。ミュンヘン近郊のシュタルンベルクにある拠点で行われた研修に参加した際、中国から来た同僚女性と接触した。週末に気管支炎を発症したものの、週明けの27日も勤務。同日20時30分に病院で感染が確認された。生命の危険はなく、すでに症状も和らいでいるものの、院内で隔離されている。
中国の同僚女性は19日から23日にかけてドイツに滞在した。その間は症状がなかったものの、帰国の機内で発症。帰国後に上海の病院へと直行し感染が確認された。この女性はドイツへの出張前、武漢から来た両親と会っており、この時に感染した可能性が高い。
ベバストは女性が感染した事実を27日に掴んだため、保健所に速やかに通報するとともに、接触した社員全員に情報を伝えた。地元バイエルン州当局の調べによると、これまでに約40人が接触したことが確認されている。
新たに感染が確認された3人は全員、ベバストの社員で、この40人のなかに含まれる。3人とも病院で隔離されている。
州保健・食品安全局(LGL)は、面と向かって15分以上、会話をするなどしなければ感染する可能性は低いと指摘。街中を歩くだけで感染するリスクは小さいとして、マスクを着用する必要はないとの見方を示した。ただ、マスクはすでに多くの薬局で売り切れており、市民の間に不安が広がっているもようだ。
ドイツの空港では現在、中国からの乗客に向けて、疑わしい症状がある場合は病院で診察を受けるよう呼びかけている。体温検査は行っていない。
イェンス・シュパーン独保健相は28日、新型肺炎にドイツで感染するリスクは低いとするロベルト・コッホ研究所の見解を示すとともに、航空会社と病院に対し通報義務を強化したことを明らかにした。中国からの旅客機のパイロットは国内空港への着陸前に乗客の健康状態を管制官に知らせなければならない。また、病院は感染が疑われる患者がいる場合、ロベルト・コッホ研究所に通報しなければならない。このほか、中国からの乗客に到着後30日間、連絡がつくよう所定の文書に必要な情報を記入することを求めている。
独外務省は28日、不急不要な渡航の見合わせ勧告対象地域を武漢市から湖北省全体に拡大した。