被用者の側から労働契約の解除を申し出た場合、雇用主は通常、未消化の有給休暇と労働時間口座の貯蓄を就業免除(Freistellung)の形で消化させ、それでも足りない場合は現金に換算して支給する。大抵はこれでスムーズに「きれいさっぱりさようなら」となる。だが、時に被用者が不服として裁判を起こすこともある。今回はそうした裁判で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年8月に下した判決(訴訟番号:9
AZR
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裁判は老人ホームを退社した介護職員が同ホームの経営者を相手取って起こしたもの。同職員は2017年4月24日付の文書で、5月末付けの自己都合退職(自主退社)を申し出た。経営者はこれを受けて、未消化の有給休暇と労働時間口座の貯蓄を消化する形で5月の勤務をすべて免除することを、「撤回できない(unwiderruflich)」確定事項として通知。終業免除で消化し切れない分については5月の給与に上乗せして現金で支給することも併せて伝えた。これらの通知事項はすべて履行された。
それにもかかわらず、原告は未消化の有給休暇が計10日残っていると主張。これを現金(1,130.80ユーロ)に換算して支給することを求めて提訴した。
原告は一審と二審でともに敗訴し、最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、被告が原告に対して、仮に5月も勤務させる可能性を保留していれば、原告の有給休暇の権利は消滅しなかったが、被告が撤回できない確定事項として有給で勤務を免除したことを指摘。これにより原告の有給休暇の権利は満たされたことになるとの判断を示した。さらにまた、被告が就業免除措置を取ったのは、原告の有給休暇の権利を満たすためであることを、原告は理解できたはずだとも言い渡した。