Ifo経済研究所は19日、3月のドイツ企業景況感指数(2015年=100)の暫定値を公表した。本来は25日に確定値を発表する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて景況感の下落幅が東西ドイツ統一後の最高を記録したことから、約90%のデータを集計した時点で数値を明らかにした。同指数を繰り上げて発表するのは調査を開始した1949年以降で初めてだ。
Ifoは製造、サービス、流通、建設業界の計9,000社を対象にアンケート調査を毎月、実施して企業景況感指数を算出している。3月の同指数は前月の96.0から87.7へと8.3ポイント下落。リーマンショックに端を発する金融・経済危機のさなかにあった09年8月以来の低水準となった。Ifoのクレメンス・フュスト所長は「ドイツ経済は景気後退(リセッション)局面へと転げ落ちた」と明言した。
現状判断を示す指数と今後6カ月の見通しを示す指数がともに急落したが、先行きを全く読めないことを受けて特に期待指数で下落幅が大きかった。期待指数は前月の93.2から82.0へと11.2ポイント低下。現状判断指数も99.0から5.2ポイント下がり93.8となった。
製造業の景況感指数(現状判断指数と期待指数の中央値)はマイナス17.2となり、前月のマイナス1.5から15.7ポイント低下した。製造業のすべての分野で悪化。期待指数の下げ幅は70年の歴史で最大となった。
サービス業の景況感指数はマイナス2.0となり、前月のプラス17.4から19.4ポイント下落した。新型コロナの流行拡大で需要が落ち込んでいたところに、基本的な生活の維持に必要のない事業者に対し営業停止命令が下されたことが追い打ちをかけ、大幅下落を引き起こした。
これは流通業にも当てはまることで、同業界の景況感指数はプラス1.0からマイナス20.4へと21.4ポイント低下した。小売と卸売でともに大きく落ち込んでいる。
建設業の景況感指数も前月の13.0から7.6へと5.4ポイント低下したものの、下げ幅は他の3業界に比べ小さかった。現状判断指数が依然として高い水準を保っているためで、期待指数は大きく落ち込んだ。
Ifoは国内総生産(GDP)が今年は少なくとも1.5%縮小するとの見通しも示した。最悪の場合は縮小幅が09年と同じ6%程度に達する恐れもあるとしている。マイナス成長幅がどの程度になるかは、新型コロナ感染の拡大防止に向けて政府がどのような措置を取るか、および他の国の政策にかかっているという。
キール世界経済研究所(IfW)は景気が5月に回復へと転じた場合はマイナス成長幅が4.5%、8月の場合は同9%弱に達するとみており、Ifoよりも悲観的だ。政策金融機関ドイツ復興金融公庫(KfW)の主任エコノミストは、正常化の時期が全く読めないことが問題だと指摘したうえで、「第2四半期(4~6月)のGDPが前期比で10~15%減少することは十分に考えられる」と述べた。ドイツ経済研究所(DIW)の景気分析主任は、経済が急落し、その後V字回復せずに消費も生産も低水準でL字型に推移する恐れがあるとしている。