富士フイルムの「アビガン」を独が調達、新型コロナ対策で

富士フイルムのインフルエンザ治療薬「アビガン」をドイツ政府が調達する。新型コロナウイルスへの効果が見込まれるためで、連邦保健省は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、重症化した患者の治療に投入するために調達に乗り出したことを明らかにした。数百万箱を確保する考えのようだ。

アビガンは富士フイルムの子会社、富士フイルム富山化学が2014年に開発した医薬品。インフルエンザのほか、エボラ出血熱など他の感染症にも効果がある。中国政府は3月、新型コロナの臨床試験で効果があったことを明らかにした。イタリアのベネチア、ロンバルディア、エミリア・ロマーニャでは現在、患者に試験投与されている。チェコの医薬品監督機関は調達に向けて交渉中だ。独政府の顧問役を務めるベルリン大学病院(シャリテー)のクリスティアン・ドロステン教授(ウイルス学)は「大きな期待が持てる」と同薬を高く評価した。

政府は調達したアビガンを大学病院と治療センターの院内薬局を通して各地の患者向けに供給していく。輸送に当たっては国防軍の協力を受ける。

新型コロナに対しては現在、認可を受けた正式の医薬品が存在しない。ことため製薬会社は治療薬とワクチンの開発に取り組んでいるが、治療薬の開発には長い時間がかかる。ワクチンについても実用化は早くても秋、一般向けの接種は来年になると予想されている。

既存薬を新型コロナ患者に投与できれば死亡リスクを下げることができるため、アビガンなど効果が期待できる既存の治療薬に注目が集まっている。

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