独自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長や自動車大手フォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMWの社長は1日、アンゲラ・メルケル首相などと電話会談し、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて停止している自動車の生産を欧州連合(EU)域内でスムーズに再開できるようにするため政治的な調整を要請した。ドイツなどが単独で生産を再開しようとしてもイタリアやスペイン製の部品が供給されなければ実現できないことから、少なくともEUレベルで歩調を合わせる必要があるとしている。ミュラー会長は2日の記者会見で、車両生産をいつ再開できるかを現時点では明言できないと述べた。
また、生産を再開しても需要がなければ意味がないことから、ディーラーの営業再開や陸運当局の車両登録・型式認定業務正常化も必要不可欠だとして、適切な措置を要請した。
欧州の自動車業界団体とサプライヤー団体も同様の要請を欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長に提出している。
一方、バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(LBBW)のアナリストは、新型コロナの影響で世界の自動車販売台数が今年12~15%減少するとして、自動車メーカーは存続の危機に陥りかねないと警鐘を鳴らした。そのうえで、EUが新車の二酸化炭素(CO2)排出基準を順守できないメーカーに課す制裁金の総額が初年度の今年は約150億ユーロに達するとの試算を示し、同制裁金ルールの見直しを論議するよう促した。独大手メーカーは新型コロナ危機と制裁金のダブルパンチを乗り切れるが、仏メーカーなどには懸念があるとみているためだ。伊米資本のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏グループPSAの合併計画はとん挫する可能性があるとみている。
独メーカーはEUのCO2規制を見直す必要はないとの立場だ。VDAのミュラー会長は「このコロナ危機の時でもCO2目標を全面的に支持する」と明言した。ただ、欧州委のフォンデアライエン委員長が打ち出した包括的な環境政策「欧州グリーンディール」に絡んで議論されている新たなCO2規制については、「今はCO2規制のさらなる強化を考える時ではない」として見合わせを要請している。