ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は18日に開いたテレビ会議方式の首脳会談で、EUが新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた加盟国の経済復興を支援するため創設する「復興基金」の制度設計で合意した。基金は5,000億ユーロ規模とし、資金は欧州委員会が市場で調達。被害が深刻な地域や産業に補助金として給付する。欧州委に共同提案し、加盟国による承認を取り付けることを目指す。
EU27カ国は4月下旬の首脳会議で、EUの次期中期予算(対象期間2021~27年)に組み込む形で同基金を創設することで合意した。ただ、規模や財源など制度設計については決まっておらず、欧州委が具体案を提示することになっていた。
独仏首脳の合意は、欧州委が債券市場で調達する資金をEUの中期予算に組み込み、各国に配分するという内容。イタリアなど新型コロナによる経済の打撃が大きく、しかも財政悪化で国債発行での資金調達が難しい国に代わって、欧州委がEUの信用力を生かして有利な条件で資金を確保するという仕組みだ。補助金となるため、返済は不要となる。ただ、欧州委が調達した資金はEU予算から長期的に返済するため、加盟国に負担が回る可能性はある。
復興基金の財源に関しては、フランスとイタリア、スペインなどが「コロナ債」と称されるユーロ圏共同債を発行することを提唱していたが、ドイツやオーストリア、オランダなど財政健全化に努めてきた加盟国が、財政が厳しい南欧諸国などの債務を肩代わりすることになりかねないとして反対してきた。さらに、両勢力は補助金とするか、あくまで融資として受益国に返済を求めるかについても大きな溝があった。
今回の合意は、EUが全体として借金し、共同で債務を負い、苦境にある国を補助金で支援するという点で、フランスなどの主張に近いものだ。ドイツが未曾有の危機に直面するEUの連帯を最優先し、歩み寄った格好となる。メルケル首相は会談後の記者会見で、「例のない危機だけに、異例の道を選ぶ」と述べた。さらに同首相は、ドイツがEUの次期中期予算への拠出を通じて、基金の27%に相当する額を負担する意向も表明した。
欧州委は同提案を参考に、27日にEU案を公表する。フォンデアライエン委員長は、独仏案は「欧州委が検討している案と同じ方向性だ」として歓迎の意を表明した。
ただ、最終的にまとまる具体案は全加盟国の承認が必要。イタリアのコンテ首相は歓迎の意を示したものの、オーストリアなど財政健全国は融資ではなく補助金とすることに反発しており、今後の交渉の難航が予想される。