電動車購入で補助金の併用認めず、国が路線転換

電動車の普及に向けて国や州が提供する購入補助金を複数、受給することを認めた従来の政策路線をドイツ政府が転換した。ロイター通信が経済省の確認を得た情報として19日、報じたもので、同省は「過剰な助成の回避」が狙いだと趣旨を説明した。ただ、複数の補助金を受給することを前提に電動車の購入を検討する消費者や企業は多いとみられることから、政府の路線転換は需要を押し下げる可能性がある。

政府は新型コロナ危機で急速に悪化した景気のテコ入れ策の一環として、電動車購入補助金を7月に引き上げた。内燃機関車に比べてなおも需要が小さい電動車の普及を促進する狙いもある。

同補助金は2016年7月に導入された。これまでの補助金額はカタログ価格4万ユーロ以下の電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)で6,000ユーロ、同4万ユーロ超のEVとFCVで5,000ユーロ、4万ユーロ以下のプラグインハイブリッド車(PHV)で4,500ユーロ、4万ユーロ超のPHVで3,750ユーロ。補助金は国と各メーカーが折半してきた。

同補助金の国の負担部分はコロナ危機対策で2倍に引き上げられた。この結果、例えば4万ユーロ以下のEVであれば購入者は9,000ユーロの補助金(国が6,000ユーロ、メーカーが3,000ユーロを負担)を受けられるようになった。

国は電動車の普及策としてこのほか、福祉車両の電動化を促進する「社会&移動」プログラム、タクシーとレンタカー、カーシェア車両の電動化を促進する「清浄な空気」プログラム、FCVの普及を促進する「国家水素燃料・燃料電池技術イノベーションプログラム」を展開している。また、州や基礎自治体も同様の支援策を実施している。例えばベルリン州は、小規模事業者が業務用車両を電動車に切り替えることを促進する「ヴェルモ」というプログラムを実施中だ。

これまではこれらプログラムの補助金と電動車購入補助金をともに受給することができた。だが、電動車購入補助金を所轄する連邦経済省が、他の補助金の並行受給を認めない方針へと転換し、複数の補助金を受給できなくしたもようだ。ヴェルモのホームページ上には「ヴェルモ補助金の申請を撤回し、(国の)引き上げられた電動車購入補助金のみを申請するのかどうかをご検討ください」と記されている。

独リース事業者全国連盟(BDL)のクラウディア・コーネン専務理事はロイター通信に、リース会社は並行受給を認めた従来の政策路線をベースにリース料金をすでに算出済みだと指摘。「従来の助成路線からの転換に当惑している」と述べた。多くの企業、顧客にとって電動車購入の魅力はなくなると明言している。

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