ストライキに参加している被用者の代替要員として雇用主が派遣社員を就労させることは「スト破り」である。ドイツでは労働者派遣法(AUEG)11条5項で明確に禁止されている。この条項が基本法(憲法)で保障された雇用主の権利を侵害しているかどうかを巡る裁判で連邦憲法裁判所(BVerfG)が6月の決定(訴訟番号:1 BvR 842/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
違憲訴訟は娯楽業界の企業が起こしたもの。同社はストに対抗する手段をAUEG11条5項の規定により制限されていることを問題視し、提訴した。基本法9条3項で保障された、労働・経済条件の維持・促進を目的とする結社の権利の侵害に当たると訴えたのである。
連邦憲法裁はこの訴えを退けた。決定理由で裁判官は、AUEG11条5項の規定の規定は、
国家の介入を排除して労使が協定を結ぶことを保障する、基本法9条3項から派生する権利(労使協定の自律=Tarifautonomie)は労使の力関係が均衡していなと機能しないと指摘。派遣社員を利用したスト破りはこの均衡を労組に不利な形で崩し労使協定の自律を損なうことになるとして、その禁止を定めたAUEG11条5項は合憲だとの判断を示した。