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2020/9/16

総合 - ドイツ経済ニュース

EU首脳が習主席と会談、投資協定の年内妥結で合意も隔たりはなお大きく

この記事の要約

欧州連合(EU)議長国ドイツのアンゲラ・メルケル首相などEU首脳は14日、中国の習近平国家主席とテレビ会談した。米国との関係悪化を受けて国際的な孤立を避けたいという中国に対し、EU側は経済関係の公正化や温暖化防止への取り […]

欧州連合(EU)議長国ドイツのアンゲラ・メルケル首相などEU首脳は14日、中国の習近平国家主席とテレビ会談した。米国との関係悪化を受けて国際的な孤立を避けたいという中国に対し、EU側は経済関係の公正化や温暖化防止への取り組み強化、人権など民主主義の原則の順守、南シナ海の領海をめぐる争いの平和的な解決などを要求したものの、協議の進展はみられず、双方の利害・立場の相違が改めて浮き彫りになった。

今回の首脳会議は本来、EUの全加盟国が参加する形で独東部のライプチヒで開催されることになっていた。だが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けてテレビ会議へと変更。EU側の出席者もメルケル首相と、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長(大統領)、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長の3人に絞り込んだ。

会議では食品や酒類など計100以上の地理的表示(GI)を保護する協定が、12年以上に渡る協議のうえで正式に締結された。これにより「ミュンヘンビール」や「パルマハム」などEUで保護されたGIを中国企業が使用することはできなくなった。知的財産権の分野でEUが勝ち取った成果と言える。

一方、中国に対するEU最大の経済的な要求である投資保護協定の分野では双方の隔たりが依然として大きい。EUは中国に、◇中国市場への参入障壁の撤廃◇中国企業との合弁設立義務の廃止◇中国企業が政府から受ける補助金の透明化◇中国国営企業が政治目的で経済活動を行わない――ことを要求している。欧州企業が中国での活動を強く制限されているのに対し、中国企業は外部に対して開かれた欧州で高い技術を持つ欧州企業を、自国政府の支援を受けて買収するといった不公平な現状の是正が狙いだ。ミシェル議長は「我々は中国との関係が相互性、責任、根本的な公正性に基づくようになることを求めている」として、「欧州は(中国企業のための)競技場ではなく、プレイヤーにならなければならない」と明言した。

EUが中国に投資保護協定の締結を要求する背景には、同国が技術・経済力を急速に高め、多くの分野で競合するようになっていることがある。独外務省のペトラ・ジグムントアジア太平洋局長は首脳会談当日に政府サイトで公表されたインタビューで、「中国が経済大国・競合国として世界トップに近づけば近づくほど、中国と欧州の非対称的な関係は正当化できなくなる」と事情を説明した。

協定内容と順守を重視

EUと中国は今回、投資保護協定締結に向けた交渉を年末までに完了するという目標を再確認した。ただ、中国側が大幅に歩み寄らない限り妥結はほぼあり得ないことから、先延ばしになる可能性が高い。

投資保護協定交渉は13年から行われている。それにもかかわらず合意に達しないのは、中国側にメリットがないうえ、妥結を強いるだけの外交的な圧力も存在しないため。欧州企業にとって中国は必要不可欠の市場となっていることから、中国はEUの足元を見透かし、非対称的な関係を可能な限り維持したい考えだ。在中国欧州商工会議所(中国欧盟商会=EUCCC)は今回の会談直前、欧州の資本と技術は中国で依然として歓迎されているが、欧州人そのものは歓迎されていないとの認識を表明した。

ドイツ政府は会談後の声明で、「実質を伴った協定を実現するためには、中国の体制内部で高官レベルの政治的な関与が必要だ」と強調した。これまでの交渉で中国側が高官レベルの対応をしてこなかったことをうかがわせる一文だ。

投資保護協定がEUの納得できる内容で成立したとしても、中国側がこれをどの程度、順守するかは定かでない。中国は2006年、同国を初訪問したメルケル首相に模造品問題への善処を約束したが、実効的な形ではいまだに履行されていない。

投資保護協定でも同様の事態が起こり得ることから、ジグムント局長は「(交渉を年末までに完了するという)目標をさらに先送りしないことは重要だ。だが、より重要なのは、交渉の内容が適切なこと、および欧州の対中投資で自由裁量の余地が実際に拡大することだ」と強調した。