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2020/9/23

総合 - ドイツ経済ニュース

GDP戦後最悪を回避も、Ifoが-5.2%に上方修正

この記事の要約

Ifo経済研究所は22日、ドイツの今年の国内総生産(GDP)予測を引き上げた。4-6月期(第2四半期)のGDP水準が予想を上回ったうえ、その後も順調に景気回復が進んでいるためで、従来予測の前年比マイナス6.7%からマイナ […]

Ifo経済研究所は22日、ドイツの今年の国内総生産(GDP)予測を引き上げた。4-6月期(第2四半期)のGDP水準が予想を上回ったうえ、その後も順調に景気回復が進んでいるためで、従来予測の前年比マイナス6.7%からマイナス5.2%へと大幅に上方修正。マイナス成長幅が戦後最悪の2009年(-5.7%)を更新するとした見方も撤回する形となった。ドイツ政府や国際機関、主要経済研究所は今月に入ってGDP予測を相次いで上方修正しており、その大半はマイナス5%台を見込んでいる。

独連邦統計局によると、第2四半期のGDPは前期比で実質9.7%減少し、四半期ベースでは戦後最大の落ち込みを記録した。ただ、マイナス成長幅はエコノミストの予測より小さく、これが20年成長率予測引き上げのきっかけとなった。政府は今月初旬、従来予測のマイナス6.3%からマイナス5.8%へと上方修正している。

Ifoは7-9月期(第3四半期)のGDPが前期比6.6%増となり、過去最高の伸びを記録すると予想している。第2四半期に激減した個人消費と設備投資が第3四半期はそれぞれマイナス10.9%からプラス7.3%、マイナス19.6%からプラス21.8%へと好転。輸出も12.4%増と、輸入の増加幅(8.0%)を大きく上回り、外需(輸出-輸入)はGDPを2.0ポイント押し上げる。

10-12月期(第4四半期)はGDPの増加率が2.8%へと鈍化。その後は来年1-3月期(第1四半期)が1.4%、第2四半期が0.8%、第3四半期が0.5%、第4四半期が0.4%と回復のスピードが鈍っていく。

20年全体をみると、個人消費は前年比6.4%減、設備投資は12.4%減と大きく後退。輸出も11.2%減となり、減少幅が輸入の8.9%を上回る見通しだ。GDPを押し上げるのは政府最終消費支出(3.1%増)と建設投資(2.9%増)の2項目にとどまる。

景気後退を受けて失業率は今年5.9%となり、前年の5.0%から大きく上昇する。また、付加価値税率を7月に引き下げたこともあり、インフレ率は昨年の1.4%から0.6%へと低下する。

税収が大幅に減るとともに国の新型コロナ危機対策費用が莫大な額に達することから、財政収支の対名目GDP比率は前年のプラス1.5%からマイナス5.1%へと悪化する。Ifoのクレメンス・フュスト所長はこれに絡んで、「均衡財政への復帰を急ぐことは賢明でない」と明言。当面は財政出動で景気を底支えするよう政府に促した。それと同時に、ドイツと欧州全体の財政に対する投資家の信頼を保ち、国債金利を低くとどめるためには中期的に財政を再び均衡させることが重要だとも指摘し、新規債務の対GDP比率を0.35%以下にとどめることを義務づけた憲法(基本法)の「債務ブレーキ規定」は維持すべきだと強調した。

Ifoは今回のGDP予測発表で、景気の不確定要因が多いことを指摘した。具体的には◇新型コロナウイルス感染症の流行が今後、どうなるかを誰も明言できない◇英国の欧州連合(EU)離脱後の急激な変化を回避するため設けられた移行期間が終了する12月末までに自由貿易協定(FTA)を締結できない恐れ◇米国と中国の通商紛争――を列挙。これらの要因の成り行き次第では下振れするリスクを排除していない。