ロベルト・コッホ研究所(RKI)は22日、ドイツ国内の新型コロナウイルス新規感染者数が1万1,287人となり、前日(7,595人)から49%増えたことを明らかにした。1日当たりの新規感染者数が1万人を超えるのは初めて。24日には1万4,714人に拡大し、その後も1万人台の高い水準がほぼ一貫して続いており、感染拡大に歯止めがかからない状態となっている。21日には感染防止の指揮を取るイエン・シュパーン保健相の感染も確認された。
RKIのロタール・ヴィーラー所長は22日の記者会見で、「状況は極めて深刻になっている」と危機感を表明した。地域によっては感染経路を追跡しきれず状況を制御できなくなる恐れがあると指摘。社会的距離(A)、衛生(H)、マスク着用(A)、換気(L)の頭文字を取った「AHA+Lルール」の順守を市民に強く呼びかけた。順守を徹底すれば感染拡大を鈍化させることができるとしている。
感染拡大の大きな起点となっているのは結婚式や誕生会など私的なイベントで、学校や公共交通機関、ホテルでの感染は少ない。年代別ではこれまでに引き続き若年層が多いものの、重篤化しやすい60歳以上も増加傾向にあり、病院で治療を受ける患者が増えている。
アンゲラ・メルケル首相は9月末、クリスマスには国内の1日当たりの新規感染者数が1万9,200人に拡大する恐れがあると述べ、警鐘を鳴らした。この数字は当時、大袈裟と受け止められていたが、現在は現実的なものになっている。ペーター・アルトマイヤー経済相は27日、今週末(10月31日、11月1日)にはおそらく2万人に達するとの見方を示した。
67%が危険地域に
21日には人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数も前日の48.6人から51.3人に拡大し、初めて「危険水準」に達した。ドイツでは同50人を超えた地域を「危険地域」に指定し、感染防止策の強化を義務付けている。
同人数も増加し続ており、27日の発表では87.0人に達した。国内404地域のうち67%に当たる272地域で50人を突破。100人超も99地域に達している。
州別でみると、16州のうちブレーメン(126.8人)、ベルリン(126.7人)、ヘッセン(119.5人)、ノルトライン・ヴェストファーレン(116.8人)、ザールラント(99.9人)、バイエルン(92.2人)、バーデン・ヴュルテンベルク(84.5人)、ハンブルク(83.7人)、ザクセン(72.8人)、ラインラント・ファルツ(72.3人)、ニーダーザクセン(54.0人)の計11州で50人を超えた。南部と西部の州ではほとんどの郡と特別市が危険地域となっている。
人口10万人当たりの新規感染者数が最も多い地域は首都ベルリンのノイケルン区で256.9人に達した。これに同国南東部のロッタールイン郡が239.5人、同じく南東部のベルヒテスガーデン郡が219.0人で続く。両郡ではすでに外出制限や学校閉鎖などの措置が取られている。北部のデルメンホルスト市(212.7人)、西部のゾーリンゲン市(206.0人)、北部のクロッペンブルク郡(202.7人)、南部のフランクフルト市(202.0人)も200人を超えている。
フランクフルト以外の主要都市はケルンが181.9人、ベルリンが126.7人、ミュンヘンが114.4人、デュッセルドルフが104.4人、シュツットガルトが99.7、ハンブルクが83.7人となっている。
感染者数の急増を受けて感染経路を追跡できないケースが極めて多くなっている。このため保健所によっては感染経路の全面的な特定を断念。高齢者など感染すると重篤化したり死亡するリスクの高い人々を守ることに重点を置いた対策へとシフトしている。これにより集中治療ベッドが不足し適切な医療を施せなくなる医療崩壊を防ぐ考えだ。
シュパーン保健相は感染確認を受けて自宅隔離に入った。ドイツの閣僚の感染は初めて。21日には閣議に参加したものの、現時点で他の閣僚の感染は確認されていない。閣議は閣僚間の距離を十分に取れるよう大きな国際会議場を用いて行われていることから、感染リスクは低いとみられている。
保健相がどこで感染したかは判明していない。風邪のような症状が出ているものの軽症は軽い。