エネルギー大手の独ユニパ―は6日、同国北部のヴィルヘルムスハーフェン港に洋上液化天然ガス(LNG)受入基地を設置するプロジェクトがこれまで計画していた形では実現できない見通しを明らかにした。同基地から供給予定の天然ガスに対する需要が小さく、採算の目途が立たないためだ。ユニパ―は今後、同基地に関心を持つ需要家と協議を行い、十分な需要を掘り起こせる形へと計画変更する方向。長期的には水素輸入ターミナルとして利用することも視野に入れている。
ドイツは現在、主にロシアと北海産の天然ガスをパイプラインで輸入している。このうちロシア産は地政学的なリスクが大きく、ポーランドなど東欧の欧州連合(EU)加盟国や米国から批判が出ている。北海産も将来的に産出量の減少が見込まれる。政府はこれを踏まえ昨年、LNGターミナルの建設を促進するための政令案を了承し、議会の承認を得た。
ユニパ―はこうした動きを受けてヴィルヘルムスハーフェン港にLNG受入基地を設置する計画だ。5月には浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)の長期傭船契約を発効条件付きで商船三井と締結した。
同LNG受入基地から輸送する天然ガスの顧客をユニパ―のプロジェクト子会社LTeWが10月末を期限に募ったところ、関心を示す企業は多かったものの、拘束力のある予約を行う企業は少なかった。プロジェクト担当者は新型コロナ危機で経済の先行きを読みにくいことが低調な需要の一因だとの見方を示した。