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2020/11/18

総合 - ドイツ経済ニュース

5賢人委が政府のコロナ対策評価、20年GDP予測は-5.1%に引き上げ

この記事の要約

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は11日、アンゲラ・メルケル首相に『秋季経済予測(経済鑑定)』を提出した。今回は新型コロナ危機で急速に悪化した景気を底支えするための政府の対策におおむね肯定的な評価を下すとともに […]

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は11日、アンゲラ・メルケル首相に『秋季経済予測(経済鑑定)』を提出した。今回は新型コロナ危機で急速に悪化した景気を底支えするための政府の対策におおむね肯定的な評価を下すとともに、危機対策にかまけてドイツ経済が抱える構造的な問題を放置してはらなないと指摘。構造問題の解決を通して危機から従来以上に力強くなって立ち直るよう政府に適切な政策を促した。今年の国内総生産(GDP)予測については上方修正した。

5賢人委は新型コロナウイルス感染症の流行が本格化した3月以降に政府が打ち出した対策を「迅速で決然としていた」と高く評価。出業手当や操短手当などドイツが従来から持つ制度の効果と相まって危機を緩和し、GDPを底上げしているとの見方を示した。

それと同時に、コロナ危機対策のすべてが適切だとは言えないとも指摘した。具体的には付加価値税率の時限引き下げ策について、減税の効果が物価に十分に反映されておらず、家計が大きく悪化した世帯は恩恵をあまり受けていないと批判した。今後の対策としては、コロナ禍で収入が激減した企業や自営業者への支援をより多様化し、支援漏れが起きないようにすることや、前事業年度への損失繰戻の拡大を推奨している。

コロナ禍に絡んでは、在宅勤務の活用により多くの企業が業務を継続できたことで、経済的なしわ寄せが緩和されたとして、デジタル技術発展の効果を強調した。それと同時に、教育と保健・医療機関、行政ではデジタル化の遅れが明らかになったとして、国や州に速やかな対応を促した。教育現場では校内感染を防止するためにオンライン授業と対面授業を組み合わせることが緊急の課題となっているが、オンライン授業のインフラ整備が進んでいないことから、冬季でも授業中に20分に1度の換気を行わなければならない状況だ。

理系人材の拡充を提言

5賢人委はドイツが直面する構造的な課題としてデジタル化、二酸化炭素(CO2 )の排出量を差し引きでゼロにするカーボンニュートラルの実現、少子高齢化の進展への対応の3つを挙げた。このうち少子高齢化については、専門人材不足が今後、一段と深刻化することを指摘。デジタル化とカーボンニュートラルという他の課題を達成するためにも数学、情報学、自然科学、工学分野の人材を増やす政策が必要不可欠だと強調した。一例として、文系志向が高い女生徒の理系志向を高める措置を提言した。デジタル分野の知識・技術を学校教育で生徒に定着させることも重視している。このほか職業教育、生涯教育の強化を提言した。

長期的には年金受給開始年齢の引き上げも必要だとしている。具体的には平均寿命の上昇に合わせて受給開始年齢を引き上げていくことを提言。平均寿命上昇分のうち3分の2を就労期、残り3分の1を年金受給期に割り振るべきだとしている。

5賢人委はコロナ禍が始まった3月、今年のGDP成長率が実質マイナス2.8%になるとの予測を発表した。その後、新型コロナウイルスが当初予想していたよりも大きな影響を世界経済にもたらしているうえ、感染拡大の防止に向けたドイツの取り組みも想定以上に長期化したことを踏まえ6月にマイナス6.5%へと大幅に下方修正。今回これをマイナス5.1%へと引き上げた。7-9月期(第3四半期)の回復が想定を上回ったことが反映されている。11月2日に再導入されたロックダウンを織り込んだ数値だとしている。

来年についてはGDPが3.7%拡大するとの予測を提示した。