欧州連合(EU)は11日に開いた首脳会議で、2030年までに域内の温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減するとの新たな目標で合意した。EUは50年に域内の温室効果ガスを「実質ゼロ」とするカーボンニュートラル(気候中立)を目指しており、実現に向けて削減目標を従来の90年比40%から引き上げる。
EUは新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済を立て直すための政策の柱として、クリーンエネルギーへの投資拡大などを軸とする環境政策とデジタル化の推進を掲げている。温暖化対策では再生可能エネルギーのシェア拡大、EU排出量取引制度の拡充、自動車の二酸化炭素(CO2)排出規制の強化などを打ち出しており、野心的な排出削減目標を掲げることで産業構造の転換を促す狙いがある。
ミシェルEU大統領はツイッターへの投稿で「欧州は気候変動と闘うリーダーだ」と強調。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「50年の気候中立を実現するための明確な道筋を示した」と述べた。
首脳会議では石炭への依存度が高い東欧諸国が削減目標の引き上げに難色を示し、夜を徹した協議の末、11日未明にようやく合意にこぎつけた。特にポーランドは国内総生産(GDP)に基づいて国ごとの削減目標を設定する仕組みの導入や、低所得国が脱炭素化を実現するための資金支援の確約などを求めて強硬な姿勢を崩さなかったが、最終的に「炭素市場における不均衡」を是正するための協議を継続するとの文言を合意文書に盛り込むことで決着した。