BASF―リサイクル向け事業売上を10年で2倍に―

化学大手の独BASF(ルートヴィヒスハーフェン)は10日、リサイクルソリューション事業の売上高を2030年までに現在の2倍の170億ユーロに拡大する目標を打ち出した。省資源と環境保護に積極的に取り組むことは「事業免許」に等しいと認識しており、マルティン・ブルーダーミュラー社長(最高技術責任者=CTO)は、「循環経済化に向けたソリューションを提供する企業は今後、競争上で決定的に有利な立場を得ることになる」と意義を強調した。25年からは同社が加工する原料のうち年25万トンを、化石原料から再生原料へと切り替える意向だ。

リサイクルソリューション事業の拡大に向けては(1)リチウムイオン電池セルのリサイクル技術の向上(2)廃プラスチックの機械的リサイクル技術を向上させる添加剤の開発(3)廃プラスチックの化学的リサイクル技術開発――に取り組んでいることを明らかにした。

車両の電動化が今後進むと、リチウムイオン電池の使用量が増える。この結果、30年には年150万トン以上の車載電池セルがリサイクル処理される見通し。貴重な資源であるリチウム、コバルト、ニッケルが大量に再利用されることになる。

これら原料の再生に伴い発生する二酸化炭素(CO2)の量は、天然資源を採掘・精製する場合に比べ25%以上、少ない。だが、その際に使用される電力の量は極めて多いうえ、再利用できる原料の量も少ないという問題がある。

BASFはその解決に向けた新しい化学的処理技術を開発している。廃電池から原料を高純度で取り出し、ごみの発生も回避できるようにする目標だ。再生時のCO2排出量も削減する。

独調査会社コンバーシオの調べによると、世界で発生するプラスチックごみの量は現在、年2億5,000万トンに上る。このうち再利用されているのは機械的なリサイクル処理が可能な単一素材(モノマテリアル)で、全体の20%(5,000万トン)にとどまる。

機械的に再生されたプラスチックには、品質と純度が低いケースが多い。同社はこの問題を解決するために再生プラスチックの品質を向上させる様々な添加剤をすでに開発した。

機械的処理ではリサイクルできない複数の素材からなる混合プラスチックについては、熱分解して高純度の油へとリサイクルするためのプロジェクト、「ケムサイクリング」を2018年に立ち上げた。化学的リサイクル処理で用いる触媒の開発に重点を置いている。

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