欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2021/1/13

総合 - ドイツ経済ニュース

ロックダウンを延長・強化、ホットスポットでは半径15キロの移動制限

この記事の要約

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は5日に開催したテレビ会議で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた対策を協議した。12月に導入した本格的なロックダウンの効果が十分でないうえ、感染力の高い英国種、南 […]

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は5日に開催したテレビ会議で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた対策を協議した。12月に導入した本格的なロックダウンの効果が十分でないうえ、感染力の高い英国種、南アフリカ種の出現で感染がこれまで以上に広がりやすい状況となっていること踏まえ、ロックダウン措置の延長と強化を取り決めた。連邦(国)と州は共同声明で、冬季はウイルス感染が拡大しやすいうえ、当面は新型コロナ用ワクチンの供給量が限られることを指摘。1~3月は強い忍耐と規律が必要になるとして、市民に理解と節度ある行動を求めた。

同国では秋以降、新規感染者数が増加し続け10月末には2万人弱まで拡大したことから、11月2日付で今年2度目のロックダウンが導入された。ただ、マスクの感染予防効果など新型コロナに関する知見が増えたこともあり、食料品店など一部の例外を除き店舗営業が禁止された春のロックダウンに比べ規制は緩やかだった。

「ロックダウン・ライト」と呼ばれるこの措置は一定の効果を上げ、新規感染者数は横ばいに転じたものの、12月に入って再び増加し始めたことから、16日に本格的なロックダウンへと切り替えられた。

その効果がどの程度、出ているかは現時点で定かでない。年末から年始にかけては新規感染者数が大幅に減り、4日も1万1,897人とピーク時の約3分の1まで下がったものの、その背景にはクリスマスなどで感染検査・報告件数が大幅に減ったという事情があるためだ。5日には2万1,237人へと大幅に増えた。

国と州が重視する人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は4日に127人となった。以前に比べやや減少したものの、目標とする50人未満を依然として大きく上回る水準だ。50人を超えると感染経路の追跡・遮断が難しく、最終的に医療崩壊につながりかねないことから、同数値を大幅に引き下げるためにメルケル首相らは今回、ロックダウンの期限を10日から31日へと延長するとともに、接触制限措置を強化することなどを取り決めた。私的な会合で家族のメンバーと家族以外の2人以上が会うことが禁止される。また、人口10万人当たりの新規感染者数が200人を超えた地域(ホットスポット)では仕事などやむを得ない理由がない限り半径15キロを超えて移動することが禁じられる。学校と保育施設は閉鎖期限が31日まで延長された。ただ、一部の州では特定の学年について対面授業を実施している。

メルケル連邦首相と国内16州の首相は25日に開く次回の会議で2月以降の措置を協議・決定する予定だ。

在宅勤務の義務化要求強まる

新規感染者数が高止まりする理由として、冬の気温低下で感染が広がりやすいという事情のほか、出勤者数が多すぎることを指摘する声が出ている。満員のバスや電車で通勤する人が少なくないためだ。

労組系のハンス・ベックラー財団が12月に発表した調査によると、就労者全体に占める「勤務を全面的ないし主に自宅で行う人」の割合は、緩やかなロックダウンが導入された11月時点で14%にとどまった。第1回目のロックダウンが実施されていた4月(同27%)に比べおよそ半分に減っている。

マンハイム大学の研究グループが実施した調査によると、在宅勤務を行う就労者の割合が1ポイント上昇すると、感染率は最大8%減少する。調査の統括責任者は公共放送ZDFに、在宅勤務の比率が昨年春の水準まで高まれば、人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は現在の約160人(10日)から半分の80人に減少すると明言した。

隣国フランスとベルギーでは出勤しなくても仕事が可能な被用者に在宅勤務を義務付けるルールが10月から実施されている。同様のルールをドイツに導入することを求める声が高まっており、野党・緑の党は、回避可能な出社を被用者に義務付けている企業に制裁金を課す法律の制定を提言した。独労働組合連合会(DGB)のライナー・ホフマン会長は、自宅で仕事ができる被用者に在宅勤務権を認めるよう要求している。Ifo経済研究所の試算によると、ドイツの被用者の56%は出社しなくても業務を行うことができる。