与党CDUがNRW州首相を党首に選出

独メルケル首相が所属する中道右派の大政党、キリスト教民主同盟(CDU)の党大会が15日から2日間、実施され、国内最大州ノルトライン・ヴェストファーレンのアーミン・ラシェット州首相が新党首に選出された。ラシェット氏は協調を重視するリベラルなメルケル首相に政治理念が近いことから、メルケル氏の政策路線は継続されることになる。9月に行われる連邦議会(下院)選挙の首相候補にラシェット氏が指名されるかどうかは未定。姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)との調整を経て今春に決定される見通しだ。

今回の党首選はアンネッテ・クランプカレンバウアー党首が2月に辞意を表明したことから開催された。当初は4月を予定していたが、コロナ禍を受けて2度延期。バーチャル方式でようやく開催にこぎつけた。

党首選にはラシェット氏のほか、メルケル氏の宿敵であるフリードリヒ・メルツ元院内総務、外交に精通したノルベルト・レットゲン元環境相が出馬。第1回投票で過半数を制する候補がいなかったことから決選投票となり、521票を獲得したラシェット氏が466票のメルツ氏を破り選出された。

メルケル首相は2005年の就任から10年間、有権者の高い支持を保持し続け、党内の求心力も高かった。だが、15年に難民を大量に受け入れる政策に踏み切ると、難民による犯罪が各地で多発し、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が急成長。それまで抑えられていた党内保守派の批判が噴出した。

難民問題に危機感を持つCSUとの関係が悪化したこともあり、メルケル氏は18年に党首を辞任した。今秋には政界を引退することになっている。

メルツ氏は党首選でメルケル路線を批判する党員の票を獲得した。ラシェット氏に敗れたとはいえ、得票率は47%に上っており、メルケル路線への不満は根強い。ラシェット氏はこれを踏まえ選出後、大きく割れる党を1つにまとめることが自らの課題だと明言した。カレンバウアー前党首はこの課題を克服できず、早期辞任へと追い込まれた。

姉妹政党党首も有力

ドイツは今年、選挙イヤーに当たり、連邦議会のほか、計6州で州議会選挙が行われる。このうち3月14日のバーデン・ヴュルテンベルク(BW)、ラインラント・ファルツ(RP)州議選はCDUとCSUの首相候補を選定するうえで大きな意味を持つことから注目度が特に高い。

バイエルン州の地方政党であるCSUと、同州以外で活動するCDUは連邦議会で統一会派を組んでいることから、首相候補を共同で選定する。基本的には全国政党であるCDUの党首が首相候補に選ばれるが、戦後の長い歴史のなかではCSUから首相候補を出したこともある。

BW、RP両州議選はラシェット新党首の信任を問う最初の選挙となる。選挙結果が振るわなければ、ラシェット氏を首相候補に担いだのでは連邦議会選に勝てないとの見方が強まることから、CDUとCSUは首相候補を両州議選後に決定する考えだ。ラシェット氏以外の候補としてはCSUのマルクス・ゼーダー党首(バイエルン州首相)が有力視されている。

ゼーダー氏は新型コロナ対策で厳しい措置を打ち出し、人気が上昇している。一方、ラシェット氏は緩やかな規制方針が裏目に出、支持率が低迷していることから、CDU/CSUがゼーダー氏を首相候補に選ぶ可能性は低くない。

ゼーダー氏は首相候補に名乗りを上げていない。ただ、現状ではラシェット氏以外で候補になり得る人物はゼーダー氏以外に考えられない。

ゼーダー氏は前任者のホルスト・ゼーホーファー氏に権力闘争を仕掛け、州首相と党首の座を奪い取った経歴の持ち主だ。世論の追い風が吹くなかで野心家の同氏が国の首相の座を狙わないとは考えにくく、言動が注目されている。

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