欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2021/2/3

総合 - ドイツ経済ニュース

人口当たりの感染数、ピーク時の半分以下に

この記事の要約

ドイツの人口10万人当たりの直近7日間の新型コロナウイルス新規感染者数が1月27日に98人となり、およそ3カ月ぶりに100人を下回ったことが、ロベルト・コッホ研究所(RKI)の発表で分かった。本格的なロックダウンの導入な […]

ドイツの人口10万人当たりの直近7日間の新型コロナウイルス新規感染者数が1月27日に98人となり、およそ3カ月ぶりに100人を下回ったことが、ロベルト・コッホ研究所(RKI)の発表で分かった。本格的なロックダウンの導入など感染防止策の強化が奏功した格好で、2月1日には90人まで下がった。ピーク時の12月22日には197.6人に達しており、半分以下に低下した計算だ。

人口10万人当たりの7日間の新規感染者数はコロナ禍の状況判断で最も重視されている数値。政府はこれを50人以下に引き下げることを目指している。50人を超えると保健当局による感染ルートの追跡・遮断が難しくなり、最終的に医療崩壊につながる恐れがあるためだ。

コロナ禍が差し当たり峠を越えたことは他の指標からも見てとれる。27日の新規感染者数は1万7,553人で、前週同日の2万398人から減少した。ピーク時の12月18日には3万3,777人に達していた。

感染死者数も27日は941人となり、前週同日の1,013人から減少。ピーク時の1月14日(1,244人)より24%少ない。

1人の感染者が平均して何人を感染させたかを示す基本再生産数は0.87(7日間の数値)にとどまった。これは100人の感染者が87人を感染させたことを意味することから、新規感染は減少している。同値が1を超えると拡大していることになる。

状況は改善に向かっているものの、コロナ規制を緩和する動きは出ていない。人口10万人当たりの新規感染者数が依然として高水準にあるうえ、従来の新型コロナウイルスに比べ感染力の高い変異種に感染する人が国内で出始めているためだ。

政府はこれを踏まえ、ドイツ政府は新型コロナウイルスの変異種が流行する国からの自国向け乗客輸送を1月30日付で原則的に禁止した。対象は英国、アイルランド、ポルトガル、南アフリカ、エスワティニ、レソト、ブラジルの7カ国で、期間は差し当たり2月17日まで。航空、鉄道、バス、海運会社はドイツの国籍保有者や在住資格保有者、トランジットでドイツの空港を利用する人など一部の例外を除き、輸送サービスを提供できない。

政府はまた、入国制限解除対象国から2日以降、日本を除外することも決めた。1月28日の欧州連合(EU)理事会勧告を受けた措置。同解除対象国はオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、タイの5カ国に減った。

9月下旬までに全員の接種が可能

一方、新型コロナ用ワクチンの接種が停滞していることは大きな政治・社会問題に発展している。ワクチンの供給量が少なく接種の予約を取れないケースが各地で多発しているためだ。ドイツの接種率が2.3%(少なくとも1回目の接種を受けた人、1日時点)と、イスラエルの57.7%、英国の14.4%、米国の9.7%を大幅に下回っていることもあり、政府とワクチン調達を担当するEUへの批判が噴出。事態を重くみたメルケル首相は1日、州とワクチンメーカーの代表と協議し状況を把握するとともに、事態の改善に向けて取り組むことを決めた。

それによると、EUとメーカー6社の契約を通してドイツが今年、確保したワクチンの量は計3億2,220万回分に上る。国内在住者に計2回の接種を行っても余りが出る計算だ。メルケル首相は会議後の記者会見で、現時点ですでに承認されているワクチン(3種類)しか仮に接種できないとしても、予期せぬ事態が起こらない限り夏季の終了(9月21日)までに希望者全員が接種を受けられるとの見通しを明らかにした。メーカーの生産能力の関係で第1四半期の国内供給量は1,830万回分にとどまるものの、その後は大幅に増加し、第2四半期は7,710万回分、第3四半期は1億2,660万回分、第4四半期は1億20万回分に達するという。

メルケル首相はまた、EUがワクチン調達で他国に後れを取ったことが接種の遅れにつながったとの批判に反論した。EUの供給量が現時点で少ないのは米国に比べ欧州のワクチン生産能力が低いためだと指摘。また、米国が採用した緊急手続きでなく正規の手続きでワクチンを承認したことや、医療事故が起きた場合の責任問題を調達交渉で重視したことは、ワクチンに対する市民の信頼を高める効果があると意義を強調した。

国内でのワクチン需給ひっ迫を回避するための措置としては、ワクチンをいつ、どの程度、確保できるかを事前に把握する体制を整え、接種を行う州・自治体と調整を図る。