メルク―ビオンテック向けワクチン原料供給を増強―

ライフサイエンス大手の独メルクは5日、新型コロナウイルス用ワクチンを製造する独バイオ医薬品企業ビオンテックへの脂質供給を大幅に増強すると発表した。脂質は伝令RNA(mRNA)をベースとする医薬品に必要不可欠な原料。脂質の不足がワクチン製造拡大のネックとなっていることから、今年末までにビオンテック向けの供給量を増やすことで合意した。

mRNAベースのワクチンではmRNAの指令に基づき接種を受けた人の細胞内で抗体が作られる。mRNAは不安定で壊れやすいことから、細胞内に送り込むためには微細な脂質ナノ粒子で包み込む必要がある。この脂質を高品質かつオーダーメイドで量産できるメーカーが世界に数社しかないことから、コロナワクチンの実用化で急速に高まった需要に供給が追い付かない状況となっている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は3日、ワクチンメーカーや州の代表と行ったテレビ会議後の記者会見で、「mRNAワクチンの主要原料の1つである脂質をもう少し多く、生産できれば、ワクチンの製造量を増やすことができる」と述べた。首相はこの事実を同会議で初めて知ったことを正直に明かした。

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