ルネサスエレクトロニクスは8日、英国に本社を置くドイツ系の半導体大手ダイアログ・セミコンダクターを完全買収することで合意したと発表した。製品の幅を拡充し、ソリューション提供能力を強化する狙い。年内の買収手続き完了を見込む。
ダイアログを1株当たり現金67.50ユーロで買収する。これは前営業日に当たる5日の終値を20.3%上回る水準で、買収総額は約49億ユーロ(6,157億円)に上る。買収の実現にはダイアログの株主と米中独などの規制当局の承認が必要。株主の承認は、英国法に基づいて裁判所が招集する株主総会で出席株主の過半数、および議決権行使総数の75%以上が賛成することで得られる。
ダイアログは西南ドイツのキルヒハイム・ウンター・テックで創設された企業。独フランクフルト証券取引所で株式を公開している。2019年12月期の売上高は142億ドルで、営業利益3億2,400万ドルを計上した。従業員数は2,300人。電力制御用チップ事業を米アップルに売却し、現在は車載・IoT向け製品事業を強化中だ。低電力やコネクティビティ技術に強みを持つ。
同社の技術は、1枚の半導体チップ上に様々な機能を集積したSoC(システム・オン・チップ)やマイコンなどルネサスが得意とする製品と補完性が高い。ルネサスは今回の買収により、高性能電子機器のパフォーマンスや電源効率を向上させる網羅的なソリューションが提供できるようになる。買収後3年以内にコストを年1億2,500万ドル圧縮し、同4~5年以内に売上高を2億ドル拡大することを見込んでいる。