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2021/3/17

総合 - ドイツ経済ニュース

州議選でメルケル首相のCDU大敗、コロナ政策への不満などが逆風に

この記事の要約

西南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク(BW)州とラインラント・ファルツ(RLP)州で14日、州議会選挙が行われ、それぞれの第一党である緑の党と社会民主党(SPD)がトップの座を堅持した。国政レベルの最大政党でメルケル連 […]

西南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク(BW)州とラインラント・ファルツ(RLP)州で14日、州議会選挙が行われ、それぞれの第一党である緑の党と社会民主党(SPD)がトップの座を堅持した。国政レベルの最大政党でメルケル連邦首相を擁する中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)は両州で過去最低の得票率を記録。9月の連邦議会(下院)選挙に向けて早急に立て直しを図る必要が出てきた。アーミン・ラシェット新党首の首相候補選出には黄信号が灯り出した。

BW州では緑の党の得票率が過去最高の前回を2.3ポイント上回る32.6%へと上昇し、2回連続で第一党となった。CDUは2.9ポイント減の24.1%で、前回に続き過去最低を更新した。中道左派のSPDは1.7ポイント減の11.0%、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は5.4ポイント減の9.7%。中道右派の自由民主党(FDP)は2.2ポイント増の10.5%となり、2回連続で得票率を伸ばした。

RLP州では緑の党を除き主要政党の得票率が軒並み落ち込んだ。減少幅が特に大きかったのはCDUとAfDで、それぞれ4.1ポイント減の27.7%、4.3ポイント減の8.3%へと縮小した。第一党のSPDは0.5ポイント減の35.7%と減少幅が小さい。同州でSPDと連立を組むFDPと緑の党はそれぞれ0.7ポイント減の5.5%、4.0ポイント増の9.3%だった。地方政党「自由な選挙人(FW)」は3.2ポイント増の5.4%となり、議会進出に必要な5%ラインを上回った。

CDUのパウル・チーミアク幹事長は選挙後の会見で、両州の現職首相の高い人気、連邦議会議員のマスク汚職疑惑、コロナ対策への市民の不満の高まりの3点を敗北の原因として挙げた。

現職首相を擁する政党は支持率が高くなる傾向がある。首相に対するシンパシーが党の支持率を押し上げるためだ。両州では「首相ボーナス」と呼ばれるこの効果が明確に現れた。公共放送ZDFの委託で世論調査機関ヴァーレンが実施した有権者アンケート調査によると、BW州では現職のクレッチュマン首相(緑の党)の再選を支持するとの回答が70%、RLP州でも同ドライヤー首相(SPD)の支持が57%に達し、CDUの対立候補をともに圧倒した。

マスク汚職疑惑は、CDUと姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)の複数の議員がそれぞれ中国製マスクの調達を仲介し莫大な手数料を稼いでいた事件。歴史的な緊急事態であるコロナ禍を利用して私腹を肥やしたことが問題視されている。この疑惑は両州議選の直前に判明した。

メルケル連邦首相が中心となって策定・実施するコロナ対策に対する市民の支持は依然として高い。ただ、ロックダウンの長期化受けて最近は不満も高まっている。BW州の有権者アンケート調査ではワクチン接種の遅れと混乱を「不満」とする回答が77%、登校制限など学校関連の規制を不満とする回答が73%に達した。こうした不満が、保健など主要なコロナ対策を主導する国政与党のCDUに不利に働いた。

新党首は追い風送れず

ラシェット氏(ノルトライン・ヴェストファーレン州首相)は2カ月前の1月中旬にCDUの党首に選出されたばかりで、同氏に両州議選大敗の責任はない。ただ、コロナ対策などでこれといった成果を上げていないことから、同党首が選挙に追い風を送れなかったのも事実だ。

CSUのマルクス・ゼーダー党首(バイエルン州首相)は連邦首相の座を狙っているとみられる。コロナ対策で評価を上げ、アンケート調査ではラシェット氏より人気が高い。ラシェット氏が速やかに巻き返しを図れないと、CDUとCSUの共同首相候補にゼーダー氏が選ばれる可能性は高まる。

AfDは州議選で得票率を大幅に低下させた。2016年の前回選挙では連邦政府の難民受け入れ政策を受けて躍進したが、移民排斥以外に有権者を引き付ける政策がないことから今回は失速した。

両州議選の獲得議席数をみると、BW州では緑の党が58、CDUが42、SPDが19、FDPが18、AfDが17となった。総議席数は154で、過半数ラインは78。次期政権の現実的な選択肢としては◇緑の党とCDUの現政権継続◇緑の党とSPD、FDPの3党連立――が考えられる。

RLP州の議席数はSPDが39、CDUが31、緑の党が10、AfDが9、FDPとFWがそれぞれ6。総議席数は101で、過半数ラインは51。SPDは15日、緑の党、FDPと組む現連立政権を継続する方向で協議する意向を表明した。