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2021/4/21

総合 - ドイツ経済ニュース

首相候補出そろう、初擁立の緑の党は女性共同党首に

この記事の要約

9月の連邦議会(下院)選挙で第一党となり次期首相を輩出する可能性のあるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と緑の党が首相候補を相次いで決定した。これで選挙戦の顔が出そろった格好。メルケル首相(CDU)の後継を巡る争 […]

9月の連邦議会(下院)選挙で第一党となり次期首相を輩出する可能性のあるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と緑の党が首相候補を相次いで決定した。これで選挙戦の顔が出そろった格好。メルケル首相(CDU)の後継を巡る争いが今後5カ月、繰り広げられることになる。

中道左派の野党、緑の党は19日、アンナレーナ・ベアボック共同党首(女性)を首相候補とする方針を発表した。同党が首相候補を擁立するのは初めて。ロベルト・ハーベック共同党首(男性)とベアボック共同党首が2人で話し合い決めた。6月の党大会で正式決定する予定だ。

緑の党は1980年の設立で、環境保護と人権を特に重視している。連邦議会には83年に初進出した。選挙での得票率は09年の10.7 %が最高で、17年9月の前回選挙は8.9%にとどまった。

ベアボック、ハーベック両氏は翌18年1月の党大会で共同党首に選出された。若々しくさわやかな印象もあり、両党首の下で党の人気は急上昇。党員数は約70%増加した。また、19年の欧州議会選挙では20%超の得票率を確保した。最新の有権者アンケート調査では支持率が24%に達し、中道右派の与党CDU/CSU(37%)に次ぐ2位に付けている。高齢者を最大の支持層とする既存の2大政党(CDU/CSUと中道左派の社会民主党=SPD)と異なり、若年から中年層にかけて支持率が高いことから党勢拡大の余地は大きい。

両共同党首がベアボック氏を首相候補にすることで合意した理由は不明。緑の党は男女平等の実現を最も強く打ち出す政党であることがベアボック氏にプラスに働いた可能性がある。ヨシュカ・フィッシャー元副首相やバーデン・ヴュルテンベルク州のヴィンフリート・クレッチュマン州首相など政界の重要なポストに就く同党の党員はこれまですべて男性だったことから、仮にハーベック氏を首相候補に選ぶと党のイメージに傷がつくという事情もあった。

ベアボック氏は1980年に独北西部のハノーバーで生まれた。大学では政治学と公法を専攻。卒業後はジャーナリストや議員と会派の裏方として働き、13年に連邦議会議員に選出された。独東部のブランデンブルク州に住んでおり、党の同州支部長を務めたこともある。既婚で子供が2人いる。

共同党首に就任当初は全国レベルで無名の存在で、ハーベック共同党首の陰に隠れがちだったが、トークショーに頻繁に出演。政治家としての専門的な知識のレベルはハーベック氏よりも高いと目されるようになった。交渉力や貫徹力も高く、他党からも一目置かれている。19年の党大会で97%の賛成を得て再選されるなど党内の人気は高い。翌朝の仕事の準備で分からないことがあると、深夜であっても党友に電話で質問するなど極めて勤勉だ。

州も含めてこれまで首相や閣僚の経験がないことは首相候補としての弱みとなる。神経質で不機嫌を顔に出すとの評価があることから、政権を獲得して首相ないし大臣に就任した場合、世論やメディア、野党の厳しい批判にうまく対応できるかが問われそうだ。

CSU党首が断念

CDU/CSUでは首相候補の選定が難航した。両党の党首がともに名乗りを上げていたためだが、ジュニアパートナーであるCSUのマルクス・ゼーダー党首(バイエルン州首相)が20日の記者会見で、CDUのアーミン・ラシェット党首(ノルトライン・ヴェストファーレン州首相)を両党の首相候補にすることを支持すると発表したことで決着がついた。

CDUのラシェット党首は当初からCDU/CSUの首相候補となる意向を表明していた。これに対しCSUのゼーダー党首は首相候補の座を狙っていたにもかかわらず、意思表示を意図的に避けてきた。全国政党で勢力の大きいCDU の同意なしに首相候補となることはできないためだ。

ゼーダー氏は世論調査でラシェット氏を大きく上回る人気を保っていることから、これを武器にCDUに揺さぶりをかけ、CDUの支持をラシェット氏からじわじわと奪い取っていく戦略を取ってきた。

CDU/CSUの支持率がコロナ規制の混迷やワクチン接種の遅れを背景に低下すると、両党内では首相候補を速やかに選定すべきだとの声が高まった。ゼーダー氏はこれを受け11日にようやく名乗りを上げ、支持率の高い者が首相候補になるべきだと強調。CDUの地方支部や一部の州の首相から支持を取り付けた。

ただ、CDUとCSUが対立して泥仕合に陥ることは両党にとって好ましくないため、CDUがラシェット氏を首相候補に選出すればこれを尊重して受け入れるとの立場を繰り返し表明。ラシェット氏がこれを踏まえ19日にCDUの党役員会を開き、正式に支持を取り付けたことから、身を引いた。

ゼーダー氏は記者会見で、地元バイエルンだけでなく全国の至る所から支持を受けていたと悔しさをにじませながらも「分裂は望まない」と述べ、今後は「恨むことなくラシェット氏を全力で支えていく」意向を表明した。17年に行われた前回選挙の前には難民問題を巡ってCSUがメルケル首相(当時はCDU党首)を激しく攻撃し、両党の関係が悪化した経緯がある。そうした事態は回避したい考えだ。

緑の党の首相誕生も

首相候補を擁立する政党は戦後、2大政党のCDU/CSUとSPDに限られていた。今回は緑の党を含む3党(CDUとCSUは別の政党であるため正確には3会派)が首相の座を争うことになる。SPDは早い時点でオーラフ・ショルツ財務相(副首相)を首相候補に選出していた。

公共放送ZDFの委託で世論調査機関ヴァーレンが今月上旬に実施した有権者アンケート調査では、ゼーダー氏に「首相を務める能力がある」とする回答が63%に達し、他の4人を大きく上回った。ラシェット氏は同29%にとどまる。ショルツ氏は37%、ハーベック氏は29%、ベアボック氏は24%。ショルツ氏は2位に付けているものの、SPDの支持率が13%と極めて低いことから首相になる可能性は実質的にない。首相の座を巡る争いは皮肉にも有権者の人気が最も低いベアボック氏とラシェット氏が繰り広げることになる。現在の政党支持率から判断するとラシェット氏が勝つ可能性が高い。