EUが域外からの渡航規制緩和へ、ワクチン接種条件に観光客も受け入れ

欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、域外の第三国から域内への渡航を制限する措置の緩和を提案した。新型コロナウイルス感染が深刻でない国については、観光客もワクチン接種を終えていることを条件に受け入れる。夏の観光シーズンが始まる6月からの実施を想定している。

EUでは現在、域外からの不要不急の渡航を禁止している。例外はコロナ感染状況が落ち着いていると判断したオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、タイ、韓国、ルワンダ、中国の7カ国だけ。中国は相互主義に沿って同国がEUからの渡航者を受け入れることが条件となっており、実際には渡航規制が緩和されていない。

欧州委の提案は、渡航規制緩和を認める国を決める際の基準を緩めて対象国を拡大し、EUの欧州医薬品庁(EMA)が承認したワクチンの接種を完了(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ製のワクチンは2回、ジョンソン・エンド・ジョンソン=J&J製は1回)した人であれば観光目的でも受け入れるというものだ。

認定基準については、現行規定では過去14日間の人口10万人当たりの新規感染者数が100人以下となっているが、これを25人以下に引き下げる。新たにイスラエルが対象国に加えられるのは確実だ。ワクチンはEMAが承認していないメーカーのものも、世界保健機関(WHO)が承認していれば、加盟国の判断で受け入れることができるようにする。

ワクチン接種に関しては、旅行の14日以上前に完了していることが渡航の条件となる。また、入国時のPCR検査、一定期間の隔離など、7カ国の旅行者に適用している既存のルールは継続される。

この渡航規制緩和は、コロナ禍で大きな打撃を受けている域内観光業の復興が狙い。加盟国による承認を経て実施する。法的拘束力はなく、各国が独自の判断で緩和するかどうかを決めることができる。検査、隔離も各国が不要と判断すれば免除する。

ただ、欧州委は渡航規制緩和による変異型ウイルスの感染拡大を警戒しており、対象国の感染状況が悪化した場合は、当該国からの観光客受け入れを即座に禁止する「緊急ブレーキ」措置を導入する。

上部へスクロール