航空大手の独ルフトハンザは14日、増資の準備を金融機関に委託したと発表した。コロナ禍で悪化した経営を底支えするために国から得た支援を、市場資金で早期に返済。利払いコストを削減するとともに、経営の自由を取り戻す狙いだ。新規感染者数が減少し、経営を取り巻く環境が改善してきたことから、市場資金調達の好機と判断した。
ルフトハンザは昨春、国の経済安定化基金(WSF)と交渉し支援を取り付けた。具体的には◇政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)が民間銀行と共同で30億ユーロの協調融資を行う◇WSFが決議権のない出資を最大57億ユーロ実施するほか、第三者割当増資も引き受けて株式20%を1株当たり2.56ユーロ、総額およそ3億ユーロで取得する――を取り決めた。また、WSFはルフトハンザを買収から守る必要が出た場合は株式5%プラス1株を追加取得し、重要決議の阻止に必要な25%超へと出資比率を引き上げることになっている。
決議権のない出資はクーポン付きで、同社はWSFに毎年、所定の利子を支払わなければならない。利率は2020年と21年が各4%。その後は毎年上昇し、27年には9.5%へと達する。利子を支払わない場合、WSFは同出資のうち10億ユーロを2度に分けて(24年以降と26年以降)株式へと転換できる。これに伴い取得する株式は1回当たり5%。26年以降の株式転換は、同社を買収から守るための株式追加取得(5%プラス1株)を行わなかった場合にのみ実施される。決議権のない出資のうち株式転換の対象とならない部分(最大47億ユーロ)がルフトハンザの自己資本となる。
同社が決議権のない出資を全額、返済した後に、株価がWSFの取得価格(2.56ユーロ)を超えた場合、WSFは全保有株を時価で売却しなければならない。売却期限は23年末。WSFの保有株20%は現在、時価が取得時の約4倍のおよそ12億ユーロに拡大していることから、同株の売却は国にとってもメリットが大きい。
国の支援の条件として、ルフトハンザは配当の見合わせと役員報酬の制限を義務付けられている。同社は決議権のない出資を全額、返済することで、国のこうした拘束から自由になることができる。すでに5月の株主総会で最大55億の増資を認められている。
市場資金を調達しやすくするため、同社は24年までに売上高営業利益率(調整前のEBITベース)を8%、調整済みベースの使用資本利益率(ROCE)を10%へと引き上げる目標を打ち出した。人件費・間接費の削減、事業のスリム化、保有機材の近代・標準化を通して同年までにコストを19年比で約35億ユーロ圧縮する。