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2021/9/1

総合 - ドイツ経済ニュース

連邦議会選挙は三つ巴の戦いに、社民ショルツ首相候補の人気急上昇で

この記事の要約

9月下旬の連邦議会選挙まで1カ月を切った。これまでは中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と環境政党・緑の党が第一党の座を争ってきたが、ここに来て中道左派の社会民主党(SPD)の人気が急上昇。3党のうちどの […]

9月下旬の連邦議会選挙まで1カ月を切った。これまでは中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と環境政党・緑の党が第一党の座を争ってきたが、ここに来て中道左派の社会民主党(SPD)の人気が急上昇。3党のうちどの政党が最大の議席を獲得するかが読みにくくなってきた。

公共放送ZDFは8月27日、世論調査機関ヴァーレンが実施した最新の有権者アンケート調査の結果を発表した。それによると、SPDの支持率は22%となり、前回(13日)の19%から3ポイントも上昇。CDU/CSUが4ポイント減の22%へと落ち込んだことから、トップを分け合う形となった。5月をピークに支持率の低下が続いていた緑の党は1ポイント増の20%となり、ようやく好転した。

世論調査機関フォルサのアンケートをもとに民放RTLなどが24日に発表した支持率ではSPDが23%となり、CDU/CSU(同22%)を1ポイント上回った。SPDがトップに立つのは2006年以来で実に15年ぶりだ。8月下旬に発表された各種の世論調査結果をみると、SPDの支持率は22~24%に上り、CDU/CSUの22~23%をやや上回っている。

SPDはこれまで長期低落傾向にあり、支持率は小政党並みの水準まで落ち込んでいた。ヴァーレンの調査では6月25日の時点で14%にとどまり、CDU/CSU(29%)、緑の党(22%)に大きく水をあけられていた。

ここにきて支持率が大幅に伸びている背景にはオーラフ・ショルツ首相候補(財務相兼副首相)の人気が急上昇していることがある。緑の党のアンナレーナ・ベアボック首相候補は経歴詐称や無断引用の発覚で失速。CDU/CSUのアーミン・ラシェット首相候補(CDU党首、ノルトライン・ヴェストファーレン州首相)も7月中旬にドイツ西部を襲った洪水被害の視察時に付き人と不謹慎な馬鹿笑いをしたことをきっかけに、支持率の急落に歯止めがかからなくなっている。

一方、ショルツ氏は財務相という立場をフルに活用して被災地の支援方針を速やかに打ち出すなど着実にポイントを稼いでいる。

ドイツでは2005年から約16年に渡ってアンゲラ・メルケル首相(CDU)が政治のかじ取りを行い、内政と国際政治の舞台でともに大きな存在感を示してきた。9月の連邦議会選挙で選ばれる後任者がメルケル氏の退任で生じる穴を埋めるのは容易でない。

ショルツ氏はどちらかと言えば地味で、カリスマ性はない。それでもこれまでに党幹事長、労相、ハンブルク州首相を歴任するなど実績と安定感がある。この点が評価されて、うなぎ上りに人気が高まっているもようだ。

ヴァーレンの調査ではショルツ氏が「首相に適している」との回答が65%に達し、前回を6ポイント上回った。ラシェット氏(3ポイント減の25%)とベアボック氏(1ポイント減22%)を大きく引き離している。

「次期首相に一番なってほしいのは誰ですか」との質問でもショルツ氏は49%を記録。ラシェット氏(17%)とベアボック氏(16%)に水をあけた。ショルツ氏に対する有権者の評価は「信頼感」、「シンパシー」、「物事の理解力」、「将来の問題の解決力」の4分野すべてで他の2候補を圧倒している。

SPDはショルツ氏の高い人気を受け、同氏を全面に押し出す形で選挙戦を展開し始めた。骨肉を争う激しい党内論争が人気の低下につながるという従来の失敗を踏まえ、イメージ戦略に特化している。

SPDの勢いが今後さらに強まり、第一党の地位を選挙で獲得できるかどうかは定かでない。すでにどの党に投票するかを決めた有権者は10%に過ぎず、89%は未定と答えているためだ。今回の選挙戦は過去に例がないほど、政党支持率が目まぐるしく変わっており、今後およそ4週間で世論がどう動くかは予断を許さない。

各党の支持率はこれまで、首相候補のイメージに大きく左右されてきた。8月29日を皮切りに計3回、行われる首相候補3人のテレビ討論会では有意義な論議が展開され、有権者が政策を比較して投票できるようになることが求められそうだ。

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