欧州中央銀行(ECB)は9日に開いた定例政策理事会で、コロナ禍対応として実施している「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」に基づき国債、社債などの資産を買い入れる措置について、購入ペースを縮小することを決めた。ユーロ圏で景気回復が進んでいるためで、金融政策の正常化に舵を切った格好となる。
PEPPはコロナ禍対応の金融緩和の柱となっているもの。ECBが新型コロナウイルスの感染拡大で揺れるユーロ圏経済を下支えするため、2020年3月に導入した。当初の資産購入枠は7,500億ユーロだったが、1兆8,500億ユーロまで拡大された。22年3月末まで実施されることになっている。
これまでECBは、向こう3カ月は資産購入を従来より「かなり速いペース」で進めるという姿勢を維持してきた。今回の理事会では、前の2四半期より「緩やかなペース」にするという方針に転換した。
ユーロ圏では景気回復が米国、中国などと比べて遅れていたが、新型コロナウイルスワクチンの接種率が高まり、経済・社会活動の正常化が進んでいることで復調に転じている。4-6月期の域内総生産(GDP)は前期比2.2%増で、3四半期ぶりのプラス成長となった。物価も急速に持ち直している。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、21年の成長率を5.0%、インフレ率を2.2%とし、それぞれ前回(6月)の4.6%、1.9%から上方修正した。
こうした状況を踏まえて、ECBは資産購入のペースを緩めても良好な金融環境を維持できるとして、縮小を決めた。過去2四半期の毎月の購入額は800億ユーロ程度だったが、消息筋がロイター通信などに明らかにしたところによると、今後は600~700億ユーロに減らす見込みだ。