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2021/10/20

総合 - ドイツ経済ニュース

21年GDP2.4%増に下方修正、就労者減と脱炭素化で潜在成長率は低下

この記事の要約

Ifoなど有力経済研究所は14日に発表した『秋季共同予測(秋季GD)』で、2021年の国内総生産(GDP)成長率を春季予測(4月)の実質3.7%から2.4%へと大幅に引き下げた。コロナ禍からの急速な経済回復の副作用で原材 […]

Ifoなど有力経済研究所は14日に発表した『秋季共同予測(秋季GD)』で、2021年の国内総生産(GDP)成長率を春季予測(4月)の実質3.7%から2.4%へと大幅に引き下げた。コロナ禍からの急速な経済回復の副作用で原材料が世界的に不足し、製造業で生産調整が続いているうえ、ワクチン接種が頭打ちとなり気温が低下する冬季に感染が再び大きく拡大する懸念があることから、下方修正した。物価高騰に伴う需要減少もマイナス要因になるとみている。

昨年はコロナ禍で需要が鈍ったうえ、景気対策で下半期に付加価値税が引き下げられたことから、インフレ率は0.5%と低水準にとどまった。今年はその反動に加え、世界的な景気回復でエネルギー価格が高騰。ドイツでは年初から自動車や暖房用燃料に炭素税が課されるようになったこともあり、物価が大幅に上昇している。9月のインフレ率は前年同月比4.1%と28年来の高水準に達した。秋季GDはこれを踏まえ、21年はインフレ率が3.0%へと大幅に上昇するとの予測を示した。

物価高騰の大きな原因となっている原材料不足については22年に徐々に解消されていくと予想。コロナ禍の影響も同年第2四半期にはなくなり、経済は来夏に正常化するとみている。経済回復が22年に先送りされることから、同年のGDP成長率に関しては春季予測の3.9%から4.8%へと引き上げた。23年は1.9%を見込む。インフレ率については22年に2.5%となり、23年には1.7%まで下がるとみている。

労働市場も回復が続く。昨年5.9%に上昇した失業率は今年5.7%、来年5.3%に低下。再来年は5.1%となり、コロナ禍直前の19年(5.0%)の水準にほぼ戻る見通しだ。

財政収支はコロナ禍の経済対策で昨年1,452億ユーロの赤字へと転落した。今年はさらに1,737億ユーロに拡大する見通し。ただ、経済が昨年の大幅なマイナス成長からプラス成長へと好転することから、累積財政赤字の対名目GDP比率は71%から67%に改善する見通し。来年はさらに65%まで下がるとみている。

秋季GDはドイツの潜在成長率が今後、大幅に低下する見通しも明らかにした。生産年齢人口が減少するうえ、経済の脱炭素化に伴い資本ストックが時代遅れになるためだ。26年までの潜在成長率は右肩下がりで低下していき、平均も1.0%にとどまると見込んでいる。

人口当たりの就労者が減るほか、二酸化炭素(CO2)排出削減のための支出を増やさなければならなくなることから、消費者1人当たりの購買力は低下する。温暖化防止策を通した物価上昇に低所得層は対応できないため、支援策が必要になると次期政府に注意を促している。