コロナ禍からの経済回復に伴う原材料不足の影響が新聞・出版業界に波及している。新聞社によっては十分な量の印刷用紙を確保できないことから、ページ数を減らして対応。出版社も印刷部数の調整などを余儀なくされている。日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が22日付で報じた。
それによると、北ドイツのゾルタオを拠点とする地方紙『ベーメ・ツァイトゥング』は16日から紙面を削減。平日版を2ページ、土曜版を6ページ減らした。用紙サプライヤー2社が突然、供給を打ち切ったためだ。ミンデン市の『ミンデナー・ターゲブラット』紙も今月初旬から同様の措置を取っている。
新聞社全国連盟によると、印刷紙需要はコロナ禍で大きく減少した。用紙メーカーの生産能力が限られることから、その後の需要回復に供給が追い付かなくなっている。
インターネットの普及に伴う新聞発行部数の長期低落が状況を悪化させたもようだ。ドイツの印刷用紙生産量は2005年の1,050万トンから19年には700万トンに減少。コロナ禍が発生した20年はさらに100万トン強(約15%)落ち込んだ。メーカーは印刷用紙の生産能力を縮小しており、需要の急増に対応できなくなっている。
需給のひっ迫を受けて、印刷用紙の価格は上昇している。このため固定価格で契約済みの用紙に製紙会社が上乗せ価格を請求するケースが増えているもようだ。
コロナ禍は出版業界にも影響をもたらしている。新聞の三行広告・折り込み広告需要が昨年、激減したことから、印刷用紙の主要な原料である古紙が不足。印刷会社から本の印刷を断られるケースが出ている。クリスマスまでは本の供給に支障が出ないものの、その後については見通しが厳しい。エネルギー価格の高騰が用紙価格の上昇に拍車をかけているという事情もあり、出版社は難しい対応を迫られそうだ。