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2021/11/3

総合 - ドイツ経済ニュース

企業の現状判断がコロナ禍前の水準回復

この記事の要約

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は10月28日に発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、2021年の国内総生産(GDP)を夏期に発表した従来の実質3.0%から2.3%へと下方修正した。エネルギー価格の高騰や原材 […]

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は10月28日に発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、2021年の国内総生産(GDP)を夏期に発表した従来の実質3.0%から2.3%へと下方修正した。エネルギー価格の高騰や原材料不足を背景にコロナ禍からの景気回復が鈍っているためだ。ただ、企業の現状判断は大幅に改善。需要面でリスクがあるとみる企業も減少するなど、ドイツ経済は回復軌道を進んでいる。

DIHKは毎年3回(年初、夏、秋)、会員企業を対象に大規模な景気アンケート調査を行っており、今回の秋季調査では約2万8,000社から回答を得た。業種別の内訳は製造が26%、建設が6%、流通が23%、サービスが45%となっている。

それによると、事業の現状を「良い」とする回答の割合は前回調査(夏期)の32%から43%へと増加。「悪い」(14%)との差(DI)は2ポイントから29ポイントへと大幅に拡大し、ドイツで新型コロナウイルスの感染が流行する直前の20年初頭以来の高水準に達した。

同DIを部門別でみると、サービス業でマイナス11ポイントからプラス25ポイント、流通業でマイナス3ポイントからプラス25ポイントへと特に大きく改善した。感染防止の制限策が緩和されたことが背景にある。建設業(10ポイント増の51ポイント)と製造業(10ポイント増の35ポイント)も明るさを増した。

ただ、製造業の内訳をみると、機械や電機、金属製造・加工で大幅に改善したのに対し、自動車は23ポイントから6ポイントへと急速に悪化した。半導体不足のほか、車両電動化の急速な進展が押し下げ要因となっている。

コロナ禍で悪化した企業の財務は安定してきた。資金繰りに問題がないとの回答は69%に達し、前回の57%から12ポイント増加。年初に比べると19ポイント増えた。

今後1年間の事業の見通しについては「改善する」との回答が2ポイント増の27%へと拡大した。「悪化する」が7ポイント減の17%に低下したことから、「改善」と「悪化」との差(DI)は1ポイントから10ポイントへと拡大し、18年秋以来の高水準に達した。

流通とサービスが全体をけん引。製造は1ポイント増の17ポイントと小幅な伸びにとどまった。自動車のほか、化学、金属製造・加工などエネルギー集約型の中間財分野が足かせとなった。建設もエネルギー・原材料高を受けて同DIがマイナス7ポイントと振るわない。

「事業のリスク要因は何ですか」との質問では「専門人材不足」との回答が16ポイント増の59%、「エネルギー・原材料価格の高騰」が16ポイント増の58%と大幅に増加した。製造業ではエネルギー・原材料価格の高騰が81%に達している。建設業は人材不足が80%と特に多い。

「内需(の減少)」をリスク要因とする回答は12ポイント減の36%、「外需(の減少)」をリスク要因とする回答も10ポイント減の27%へと低下した。経済のリスク要因は需要サイドから供給サイドに移っており、供給のボトルネックが解消されれば、景気は加速する見通しだ。

環境保護投資が大きく増加

メーカーを対象に今後1年間の輸出見通しを尋ねた質問では輸出が「増える」との回答が横ばいの33%にとどまったものの、「減る」は4ポイント減の12%に減少。「増える」と「減る」の差(DI)は17ポイントから21ポイントへと広がった。同DIは消費財分野で8ポイント増の18ポイント、投資財分野で7ポイント増の31ポイントと大きく改善。中間財は1ポイント増の16ポイントと小幅な伸びにとどまった。また、自動車業界は5ポイント減の18ポイントへと落ち込んだ。

投資は回復基調が続いている。今後1年間の投資額を「増やす」との回答は5ポイント増の31%へと拡大した。「減らす」は8ポイント減の18%に低下しており、「増やす」と「減らす」の差(DI)は前回の0ポイントから13ポイントへと拡大し、19年初夏以来の高水準に達した。

投資を種類別でみると、「生産能力拡張投資」は4ポイント増の29%、「環境保護投資」は5ポイント増の26%と伸び率が大きかった。需要回復と、温暖化防止の緊急性が高まっていることが大きい。

雇用の「拡大」を検討する企業は6ポイント増の22%、「縮小」を検討する企業は6ポイント減の13%となり、「拡大」と「縮小」の差(DI)は前回のマイナス3ポイントからプラス9ポイントへと12ポイント改善。19年初頭以来の高水準を記録した。同DIがプラスの領域に入るのはコロナ禍の発生後、初めてだ。