新型コロナウイルス新規感染者数の急増が止まらない。ロベルト・コッホ研究所(RKI)が15日発表した人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数(7日間の発生数)は前日の289.0人から14人増の303.0人となり、初めて300人を突破。16日にはさらに312.4人へと拡大し、9日連続で過去最高を更新した。ドイツ政府は感染拡大を防ぐため、迅速抗原検査を希望者全員が無料で受けられる措置を13日付で復活させた。次期与党3党は感染防止法を規制緩和の方向で改正するとした従来の方針を改め、厳しい制限措置を導入する意向だ。
7日間の発生数は1カ月前の10月15日時点で73.4人だった。これが1週間前の8日には213.4人へと拡大。15日は8日比でさらに42%増えた。
1日当たりの新規感染者数は10日に5万196人となり、前日に記録した過去最高(3万9,676人)を27%上回った。
16日の7日間の発生数を州別でみると、ザクセン(759.3人)、バイエルン(554.2人)、テューリンゲン(546.1人)の3州で特に高い。これらの州はワクチン接種完了率(人口比)が全国平均の67.5%をいずれも下回っている。特にザクセンは57.5%と20ポイントも低い。集中治療体制が限界に達している地区は多く、バイエルンの州都ミュンヘンでは集中治療病床の空きがほとんどなくなっている。
バイエルン州政府はこうした事態を受け、感染防止規制を強化した。これまではPCR検査で陰性を証明すれば非接種者の入店・入場を認めてきた飲食店、ホテル、映画館、劇場などにも16日付でいわゆる「2G」ルールを義務化。接種完了者と感染からの快復者以外は利用できなくした。また、2Gルールが適用される場所でもマスク着用を義務化した。
2Gルールはベルリンとブランデンブルク州でも15日付で義務化された。飲食店や劇場が対象となっている。17日からはバーデン・ヴュルテンベルク州、20日からはハンブルク州が同様の措置を開始する。
ドイツでは新型コロナ感染の有無を調べる無料の迅速抗原検査が10月11日付で原則終了し、子供、ワクチン接種を受けられない人、感染の疑いがある人以外は有料化された。ワクチン接種を希望すれば誰でもすぐに接種を受けられるようになったことを踏まえた措置で、検査費用を本人負担とすることで非接種者への接種圧力を高める狙いがあった。だが、接種比率はほぼ横ばいで推移しており、所期の効果は得られていない。ここにきて感染者が急速に増えていることから、政府は検査を再び無料化することで感染経路を発見しやすくする戦略へと転換した。
墺などを「高リスク地域」に指定
次期政権樹立に向けて交渉中の社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党は10月下旬、これまで厳格な新型コロナウイルス感染防止策の法的な根拠となってきた「全国的なエピデミック状況」認定を更新せず、11月25日付で失効させる方針を表明した。ワクチン接種が進展したことで住民全体の健康リスクが低下し、感染を防ぐという名目で人権を強く制限し続けることは正当化できなくなったと判断。今後は店舗営業禁止など制約度の高い措置を実行できなくする意向を打ち出した。
だが、感染者数がその後、急速に拡大していることから、この方針に対する批判は強く、3党は修正を余儀なくされた格好だ。新たな政策の詳細は決まっていないが、メディア報道によると、接触制限も導入できるようにする意向。バスや鉄道など公共交通機関を利用する非接種者には陰性証明の提示を義務付けられるようにする。
一方、RKIは12日、オーストリアのほぼ全域とチェコ、ハンガリーを新型コロナの「高リスク地域」に指定すると発表した。これらの国で新規感染者数が高水準に達していることを踏まえたもので、14日付で発効した。ワクチンの非接種者など新型コロナの抗体を持たない人はこれらの国からドイツに入国する場合、10日間の隔離が義務付けられる(入国後6日目以降に検査を受け陰性証明を取得すれば隔離義務は解除される)。
欧州では新型コロナの感染者が増えており、すでにブルガリア、バルト3国、英国、アイルランドの国境地域、クロアチア、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、トルコ、ウクライナなどが高リスク地域に指定されている。一方、米国については今回、高リスク地域指定が解除された。