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2021/12/22

総合 - ドイツ経済ニュース

コロナ規制を一段と強化、接種完了者にも接触制限拡大

この記事の要約

ドイツのオーラフ・ショルツ新首相と国内16州の首相は21日、新型コロナウイルス対策に関する協議をテレビ会議方式で実施した。従来株に比べ感染力の高い新変異株オミクロンに感染する人が国内で増えてきたことを受けたもので、遅くと […]

ドイツのオーラフ・ショルツ新首相と国内16州の首相は21日、新型コロナウイルス対策に関する協議をテレビ会議方式で実施した。従来株に比べ感染力の高い新変異株オミクロンに感染する人が国内で増えてきたことを受けたもので、遅くとも28日から規制を一段と強化することを決議した。新政権が設置した「新型コロナウイルス政府専門家委員会」の提言を踏まえた内容となっている。

国と州は今月初旬、コロナ規制を厳格化した。新型コロナワクチンの非接種者(感染から快復した人でワクチンの接種を受けていない人=快復者は含まない)に対する制限を大幅に強化することが柱で、非接種者はスーパーマーケットや薬局など生活必需品を取り扱う店舗を除き入店を禁止された。また、接触可能な人の範囲も大幅に制限。市民が他人と会う際に非接種者がいる場合は、1家族に他の家族の2人を加えた人数が許容上限となった(14歳未満は同規制の対象外)。会合参加者が接種完了者・快復者に限られる場合は人数制限が課されていなかった。

今回の決議の施行後は、非接種者のいない私的な会合でも人数が最大10人に制限される(同)。また、スポーツや文化などの大型イベントは無観客で実施しなければならない。州によってはクラブとバーの営業が禁止される。

国と州は警察、消防、病院など重要インフラ機関・施設に対し、感染者の急増で勤務可能な人員が大幅に減っても対応できるよう、パンデミック対策の見直しを求めることも決議した。

ブランデンブルク州のディートマール・ヴォイトケ首相は20日、オミクロン株には近い将来、少なくとも1,000万人が感染するとの見方を示した。これはドイツの人口の12%に相当する規模で、経済・社会機能が半ば麻痺する恐れがある。

新型コロナウイルス政府専門家委員会は19日、今後の急速な感染拡大を防ぐために国と州は現在よりも厳格な接触制限を数日以内に実施するよう提言した。オミクロン株の感染者がドイツを含む欧州で急速に増えていることを踏まえたもので、医療とその他の重要インフラの機能を保つためには速やかな対策が必要不可欠だと強調した。

オミクロン株の感染拡大のスピードは現在主流のデルタ株を大幅に上回っており、英国、ノルウェー、デンマーク、オランダでは感染者数が2~3日で倍増。ドイツでも2~4日で2倍に膨らんでいる。重症化リスクが仮に従来株より低かったとしても、現在のスピードで感染が拡大していけば、デルタ株ですでにひっ迫している医療に一段と負荷がかかる。また、警察、消防、通信、電力、物流など他のインフラにも支障が出る懸念がある。専門家委は全会一致で採択した提言文書で、「オミクロン株はこのパンデミックに新次元をもたらす」と危機感を表明した。

医療以外のインフラ機能に支障が出る恐れがあるのは、感染者数がこれまでの経験を超える極端に高い水準に達すると、感染者だけでなく濃厚接触者も大幅に増え、隔離義務で仕事ができなくなるためだ。

オミクロン株の拡大を鈍化させるためには、ワクチン接種を加速させる必要があるものの、それだけでは不十分というのが専門家委員会の見解で、◇大規模な集会などを行わない◇集会などの際の迅速抗原検査体制を強化する◇感染防止効果の高いFFP2マスクを着用する――なども必要だとしている。

オミクロン感染者総数、1週間で5倍に

ロベルト・コッホ研究所(RKI)の16日付週報によると、ドイツ国内のオミクロン株感染者数(感染の疑いが濃厚な人を含む)は累計で325人(11月21日~12月13日)となり、前週同日発表(64人)の5倍に拡大した。このうち112人は全ゲノム解析で感染が確認され、残り213人はオミクロン株に対応したPCR検査で同株への感染が濃厚と判断された。

オミクロン株の国内感染者はほぼ全員、症状が軽いか無症状で、入院患者は1人にとどまる。死亡した人はこれまでのところいない。ワクチン接種完了者は199人で、そのうち23人はブースター接種を受けていた。メクレンブルク・フォーポマーンを除く15州で感染者が出ている。国外で感染した人は90人と全体の28%にとどまっており、大半は国内での感染だ。

症状では鼻炎が58%と最も多く、これに咳が50%、のどの痛みが44%で続いた。

12月6~12日の週(2021年第49週)の同株感染者数は183人だった。新型コロナ感染者全体に占める割合は0.4%で、デルタ株の同99.2%を大幅に下回っている。ただ、オミクロン株は感染者が急速に増えていることから、1月にはデルタ株を抜いて感染の主流となる見通しだ。

同週のオミクロン株の感染者数を州別でみると、最も多いのはデュッセルドルフを州都とするノルトライン・ヴェストファーレンで72人に上った。これにハンブルクが22人、バイエルンが19人、ニーダーザクセンが12人、ヘッセンが11人、バーデン・ヴュルテンベルクとザクセンがそれぞれ9人、ベルリンが8人、ブランデンブルクが6人、シュレスヴィヒ・ホルシュタインが5人、ブレーメンとラインラント・ファルツが各4人、ザクセン・アンハルトとテューリンゲンが各1人で続いた。メクレンブルク・フォーポマーンとザールラントは同週に感染者が出ていない。