CO2排出削減のスピード3倍に、風力発電などを優先度の高い公益に格上げ

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相(緑の党)は11日の記者会見で、炭素中立実現に向けた取り組みの強化方針を打ち出した。前政権が行ってきた取り組みでは二酸化炭素(CO2)排出削減目標と再生可能エネルギー拡大目標を達成できない見通しを踏まえたもので、CO2排出削減のスピードを3倍に加速するほか、国内発電に占める再生エネの割合を2030年までに現在の42%から約2倍の80%へと引き上げる方針だ。今春と今夏に法案を作成して年内に可決させ、目標実現の道筋をつける。同相は「これらはすべて巨大な課題だ。成功が見えてくるまでに数年を要する」と述べ、今年と来年は目標を達成できないとの見通しを示した。

キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)からなる前政権は昨春、ドイツの炭素中立実現を従来の50年から45年に前倒しするとともに、30年のCO2中間削減目標を従来の1990年比55%から65%に引き上げる法案を作成し、議会で成立させた。

ハーベック経済・気候相は今回、その実現に向けた具体策がこれまでなく、現状では目標を達成できないと指摘。今後打ち出す政策の概要を説明した。

再生エネの拡大加速に向けては助成金の入札枠(発電規模)を大幅に拡大する方針を表明した。陸上風力発電については国土の2%を用地として割り当てるとともに、航空管制や軍の設備との距離規制を緩和する。また、太陽光発電に適したすべての建築物の屋根・屋上に発電パネルが設置されるようにする意向だ。

風力発電や送電網設置プロジェクトに対しては住民や環境団体が反対運動を起こし、これが再生エネ拡大の大きなネックとなっていることから、そうしたプロジェクトを優先度の高い公共の利益と法律で位置づけて、種の多様性など他の利益に優先させ、建設計画が速やかに進むようにする。

製造業の脱炭素化投資を促進するためには価格競争のうえで不利になる企業に、従来型の技術で生産する競合製品との差額を国が補償する「炭素差額契約(CCfD)」を導入する。また、再生エネで製造するグリーン水素の生産規模に関しては従来計画の2倍に拡大する意向で、年内にも「国家水素戦略」を改正し、新たな支援プログラムを実施する。

製造業の脱炭素化や自動車の電動化を受け、国内の電力需要は今後、大幅に拡大する。ハーベック経済・気候相は30年の国内電力消費量が21年の562テラワット時(TWh)から27%増の715TWhに拡大するとの見通しを示した。電力消費が大幅に増えるなかで再生エネ比率を2倍に引き上げることはハードルが高いと目されている。

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