欧州連合(EU)の欧州委員会は1月27日、リトアニアに対する中国の差別的な貿易慣行がEU単一市場にも悪影響を及ぼしているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。中国は台湾との関係を深めるリトアニアへの圧力を強めており、EUとして不当な輸入制限に対抗する。
リトアニアは昨年7月、台湾の大使館に相当する代表機関の設置を認め、11月に首都ビリニュスに「台湾代表処」が開設された。「一つの中国」原則を掲げる中国は猛反発し、外交関係を「代理大使級」に格下げするなどの対抗措置に出た。欧州委によると、中国は12月以降、報復措置としてリトアニア製品の通関や輸入申請を拒否したり、EU加盟国の企業に対しリトアニア産の原材料をサプライチェーンから排除するよう圧力をかけており、こうした貿易慣行は差別的で、WTOルールに違反すると主張している。
欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は声明で「WTOへの提訴は容易な手段ではないが、対話による事態改善の試みは失敗に終わっており、他に方法がないと判断した。中国の威圧的な措置は単一市場に対する脅威であり、EUは一丸となって迅速に行動する」と強調。そのうえで、事態打開に向けて引き続き外交努力を行う方針を示した。
一方、中国外務省の趙立堅副報道局長は定例会見で「中国は一貫してWTOルールを順守している。これは中国とリトアニアの政治的な問題であり、中国と欧州の問題ではない」と反論した。
EUと中国は今後、WTOの紛争解決手続きに基づき当事者間の協議に入る。60日以内に解決できない場合、欧州委はWTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請できる。