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2022/3/2

総合 - ドイツ経済ニュース

最低賃金大幅引き上げ、10月から12ユーロに ミニジョブとミディジョブの月収上限も上昇

この記事の要約

ドイツ政府は2月23日の閣議で最低賃金の引き上げを柱とする法案を了承した。低賃金セクターの被用者の生活と将来の年金受給額の底上げが狙い。最大与党・社会民主党(SPD)が昨年の連邦議会(下院)選挙で最も重要な公約の1つと位 […]

ドイツ政府は2月23日の閣議で最低賃金の引き上げを柱とする法案を了承した。低賃金セクターの被用者の生活と将来の年金受給額の底上げが狙い。最大与党・社会民主党(SPD)が昨年の連邦議会(下院)選挙で最も重要な公約の1つと位置付けていた。議会の承認を経て法案が成立すると、最低賃金は10月に1時間12ユーロとなり、現在の9.82ユーロから一気に22%引き上げられる。急速なインフレで燃料や食料品など生活費需品の価格がこのところ高騰していることから、最低賃金の大幅引き上げは生活費の目減りの大きな緩衝材となりそうだ。

ドイツでは全国・全業界一律の最低賃金が2015年1月に導入された。国内の各種業界で取り決められる賃金協定をもとに2年ごとに水準が見直されることになっている。当初は8.5ユーロで、その後は緩やかに上昇。直近の今年初は上げ幅が2.3%だった。

最低賃金の額は本来、雇用者側と労働者側の代表で構成される最低賃金諮問委員会の答申を受け、政府が政令を通して制定することになっている。今回はSPDが公約とした大幅引き上げを実現するために同諮問委を回避。政府は1回限りの特例として法案を通して実施することにした。将来の引き上げは諮問委の答申に基づいて行う本来の方式に戻すとしている。

最低賃金が引き上げられると、女性と独東部の被用者を中心に約620万人が恩恵を受ける見通し。雇用者の負担は計56億ユーロ増え、社会保険料収入は22億ユーロ拡大すると見積もられている。

最低賃金の引き上げに伴い、政府はミニジョブ(被用者の税金・社会保険料納付義務が免除された低賃金労働)の月収上限を現在の450ユーロから520ユーロへと引き上げることも法案に盛り込んだ。同上限額を引き上げないと、最低賃金で働くミニジョブ就労者の勤務時間を短縮しなければならなくなり、企業の人手確保が難しくなることから、そうした事態が起こらないようにする狙いだ。ミニジョブ上限額の引き上げに連動し、被用者に軽減税率・社会保険料率が適用されるミディジョブ(ミニジョブよりも月収が高い低賃金労働)でも上限額が1,300ユーロから1,600ユーロに引き上げられる。

ミニジョブ制度では税金・社会保険料を雇用者がすべて負担するため、被用者は支給額を額面通りに受け取れる。雇用者は税・社会保険料として支給額の30%に相当する額を一律で負担する。ミニジョブ就労者数は現在740万人。そのうち300万人強は副業としてミニジョブを行っている。

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