独化学大手BASFの燃料資源子会社ヴィンタースハル・デーエーアーは2日、新規のガス・石油採掘プロジェクトをロシアで実施しないと発表した。ウクライナに対するロシアの軍事侵攻を受けた措置で、ガスパイプライン「ノルドストリーム2(NS2)」についても、拠出した資金を全額減損処理する。政治、世論、市場の圧力を受けて同業シェルやBPはすでにそうした措置を打ち出しており、追随した格好だ。マリオ・メーレン社長は「協業の土台が根底から揺すぶられた」と述べた。
NS2はバルト海経由でロシアとドイツ北部を結ぶ全長1,200キロメートルのパイプライン。2011年に開通した「ノルドストリーム1」に並行する形で敷設されたが、ロシアの軍事侵攻を受けてドイツが認可手続きを凍結したことから、稼働開始の目途が立たなくなっている。総工費95億ユーロの同プロジェクトにはロシア国営ガスプロムのほか、独ユニパー、ヴィンタースハル、英シェル、墺OMV、仏エンジーが出資している。シェルは28日に撤退の意向を表明した。ヴィンタースハルもパイプライン建設のために拠出した約10億ユーロを減損処理する。親会社BASFの財務に影響することになる。
一方、ガスプロムと共同ですでに採掘を行っているシベリアのガス田「ユジノルスコエ」と「アキモフ」については事業を継続する。欧州のエネルギー供給の安定に寄与するためと説明している。ドイツ国内で3,200キロメートルのガスパイプラインを運営するガスプロムとの合弁会社CASCADEガストランスポートについても同じ理由から出資を続ける。同社は声明で、ドイツ政府、欧州連合(EU)欧州委員会と連絡を取っていることを強調した。