欧州連合(EU)は25日の首脳会議で、ロシアによるウクライナ侵攻で拍車がかかるエネルギー価格高騰への対応策を協議し、加盟国が天然ガスを共同購入することで合意した。共同調達で交渉力を高め、価格高騰を抑制する狙い。加盟国はロシア産エネルギーへの依存解消を急ぐ方針で一致したが、ロシア産原油や天然ガスの輸入禁止については意見が分かれ、合意できなかった。
首脳会議で採択された合意文書は「ロシアによる軍事侵攻でエネルギー価格の高騰が一層深刻化している」と指摘。加盟国はロシア産エネルギーに依存するリスクを減らすため、同国からの天然ガスや石油、石炭の輸入を大幅に削減する方針を確認し、具体策として有志国による天然ガスの共同購入に乗り出すことで合意した。欧州委員会が共同購入を希望する国を代表して供給側との交渉にあたり、ウクライナや西バルカン諸国なども参加できるようにする。
米国や英国は対ロ制裁の一環として、重要な外貨獲得手段であるロシア産原油や天然ガスの禁輸に踏み切っている。しかし、EUは天然ガス消費量の4割超、石油も約3割をロシアからの輸入に頼っており、特にロシアへの依存度が高いドイツやイタリア、ハンガリーなどが慎重な姿勢を崩していない。このため合意文書では禁輸には触れず、「さらに強力な制裁の用意がある」と記すにとどめた。
米国との間ではエネルギー分野で協力関係を強化することで合意した。米国は液化天然ガス(LNG)の供給を拡大し、欧州の脱ロシア依存を支援する。米国は他国とも協力して2022年に少なくとも150億立方メートルをEUに追加供給。30年までに年間約500億立方メートルの追加供給を目指す。EU側もLNG基地の増設を推進するなど、受け入れ態勢を整える。EUは21年にロシアから約1,500億立方メートルの天然ガスを調達したが、今後は3分の1を米国などからのLNGに置き換えたい考えだ。