ドイツ連邦議会(下院)は4月28日、与党3党と野党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が上程したウクライナ支援案を採択した。政府がウクライナに重火器を直接供与する方針へと転換したことから、与野党の共同歩調が可能になった。
ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナ政府はドイツに対し重火器の直接供与を強く要請してきた。だが、オーラフ・ショルツ首相はロシアを刺激する結果、ウクライナ戦争がロシアと北大西洋条約機構(NATO)の戦争に拡大し、最終的に核戦争へと発展することを懸念。また、ドイツが保有する重火器をウクライナが使用するためには長期の訓練が必要なため、供与しても効果が薄いなどとして、そうした兵器の供与に否定的な立場を取ってきた。
政府は代わりに、重火器を間接的に供与する意向を表明していた。東欧のNATO加盟国が保有する旧ソ連製の重火器をウクライナに供与し、これらNATO加盟国にドイツが穴埋めの形で重火器を供与するというものだ。
だが、他のNATO加盟国がウクライナへの積極的な重火器支援方針を打ち出していることもあり、ドイツは支援に消極的だとの批判が強まり、与党内からも不満が出ていた。
こうした状況を受け、CDU/CSUはウクライナへの直接供与決議案を議会に上程する方針を表明。国内外の強い圧力を受け、政府は方針転換を余儀なくされた。クリスティーネ・ランプレヒト国防相は26日、「ゲパルト対空戦車」を直接供与する意向を表明した。
連邦議会は今回の決議で、ウクライナに重火器を直接・間接的に供与するほか、財政・人道支援を行うことも決めた。