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2022/5/11

総合 - ドイツ経済ニュース

北部州で国政野党CDUが大勝、極右AfDは州レベルで初の全議席喪失

この記事の要約

ドイツ北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州で8日、州議会選挙が行われ、国政レベルの野党である中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)が大勝した。CDUは同州では与党第1党。同党のダニエル・ギュンター州首相の人気が極めて高 […]

ドイツ北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州で8日、州議会選挙が行われ、国政レベルの野党である中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)が大勝した。CDUは同州では与党第1党。同党のダニエル・ギュンター州首相の人気が極めて高く、得票率を2017年の前回選挙から大幅に伸ばした。ウクライナ戦争で揺れる国政が今回の選挙にもたらした影響は小さい。

CDUの得票率は43.4%に達し、前回(32.0%)を11.4ポイント上回った。中道左派の社会民主党(SPD)は州首相候補の存在感が薄かったこともあり、27.3%から16.0%へと激減。断トツの過去最低を記録した。

緑の党は12.9%から18.3%へと伸ばし、初めてSPDを上回った。同党のロベルト・ハーベック氏やアンナレーナ・ベアボック氏など国政レベルの大臣がウクライナ戦争に絡んでポイントを稼いでいることは追い風となった可能性がある。ハーベック氏は同州の前副首相だ。30歳以下の有権者層に限ると緑の党の得票率は最も高かった。

中道右派の小政党である自由民主党(FDP)は11.5%から6.4%へと大きく後退した。

極右「ドイツのための選択肢(AfD)」は1.5ポイント減の4.4%となり、議席獲得に必要な5%を割り込んだ。州議会レベルで同党が全議席を失うのは初めて。難民問題が社会の大きなテーマではなくなっていることから、失速した格好だ。急進左派の左翼党は1.7%にとどまり、前回に引き続き議会進出を果たせなかった。

デンマーク系住民政党のSSWは2.4ポイント増の5.7%となり、初めて5%を超えた。同党は少数民族政党であるため、5%に届かなくても得票率が1議席分を超えていれば、特別ルールで議席の配分を受けることができる。

有権者を対象に世論調査機関ヴァーレンが実施したアンケート調査によると、ギュンター州首相の続投を求める人は全体の61%に達した。同氏の実績を評価する人は85%と多い。SPDと緑の党はそれぞれ州首相候補を立てて選挙に臨んだものの、全く歯が立たなかった。

選挙で「国政上の問題」を最重視したとする有権者は27%にとどまった。「州の問題」は同69%に上っており、政策レベルでも州独自のテーマが決め手となった。選挙結果が国政レベルの責任論議に発展する可能性はない。

各党の獲得議席数はCDUが34、緑の党が14、SPDが12、FDPが5、SSWが4。合計は69で、過半数ラインは35となっている。CDUは過半数に1議席足りないため、他党と連立を組む意向だ。ギュンター氏は9日、これまで連立を組んできた緑の党、FDPとそれぞれ政権樹立の予備交渉を行う考えを表明した。CDUと両党が連立した第1次ギュンター内閣では政権がスムーズに運営されており、同氏はどちらの政党に対しても好感を持っている。予備交渉の内容を踏まえ、どちらかの党と本交渉に入る見通しだ。

ギュンター氏は過去5年間、州首相として実績を上げただけでなく、国政レベルでも存在感を示してきた。今回の選挙で大勝したことを受け、今後は国政選挙でCDUの首相候補になるとの観測も浮上している。48歳と若いことから、将来性は高い。

NRW州でも15日に選挙

ドイツでは西南部のザールラント州でも3月に州議選が実施された。このときは同州の第1与党だったCDUが大敗。SPDが単独過半数議席を獲得した。CDUのトビアス・ハンス州首相(当時)の不人気が響いた。

15日には人口が最も多い西部のノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州でも州議選が行われる。ヴァーレンの最新の世論調査では現与党で州首相を排出するCDUの支持率が30%、野党SPDが同28%とほぼ拮抗しており、どちらが第1党となるかは予断を許さない。CDUが現在、連立を組むFDPは7%と低く、現政権の枠組みを維持することはできない見通し。一方、野党の緑の党は18%に達していることからCDUとSPDのどちらとでも連立を組める可能性があり、次政権樹立のカギを握りそうだ。

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