新たな対ロ制裁でEU合意、石油輸入の9割超を年内停止

欧州連合(EU)は3日、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する追加制裁を正式決定し、4日付でロシア産石油の輸入禁止措置を発動した。ロシア産原油への依存度が高いハンガリーなどに配慮して、パイプライン経由の輸入は当面対象外とするほか、一部の加盟国に輸入停止まで1~2年の猶予期間を認めるなど、年内の全面禁輸を打ち出した欧州委員会の制裁案と比べて緩やかな内容となったが、年末までに90%以上の輸入が停止される見通し。石油輸出に強く依存するロシア経済に打撃を与え、戦費調達を阻止したい考えだ。

第6弾となる今回の対ロ制裁は、5月30日の首脳会議で合意した後、大使級会合で詳細を詰めていた。

柱となるロシア産石油の禁輸措置は、約3分の2を占める海上輸送が対象となり、パイプライン経由は当面除外される。地理的条件によってロシア産への依存度が高く、代わりとなる調達先の確保が困難な加盟国に配慮したもので、具体的にはロシア南西部からウクライナや東欧諸国を通ってドイツに石油を運ぶ「ドルジバパイプライン」を利用するハンガリー、スロバキア、チェコが対象となる。ただし、ロシア産原油より高価なブレント原油を購入せざるを得ない他の加盟国との公平性を保つため、これら3カ国がロシア産原油や石油製品を他のEU諸国に転売することを禁止する。

このほかブルガリアは地理的条件から、2024年末まで海上輸送でロシアから原油と石油精製品を輸入することができる。クロアチアも23年末まで真空軽油の輸入が認められる。一方、ドイツとポーランドは自主的にパイプラインを止める方針を示している。

EUはまた、英国と協調し、ロシア産石油を運ぶ船舶への保険提供を禁止する。新規の保険契約は即時禁止し、既存の契約については6カ月以内に段階的に終了させる。英ロイズ保険組合などを使えなくなれば輸送に必要なタンカーの確保が困難になり、石油が輸出総額の4割以上を占めるロシアにとって大きな打撃となる。

追加制裁ではこのほか、モスクワ信用銀行とロシア農業銀行に続き、新たにロシア銀行最大手のズベルバンクを国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する。また、3つのロシア国営メディアのEU内での活動を禁止するほか、ロシア企業に対して会計、広報、コンサルティングなどのサービスを提供することも禁止される。ロシアへの化学品やハイテク製品の輸出禁止も拡大する。

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